赤ちゃん研究

「子育てへの影響」

2017.08.12

   世界では、育児についての考え方が若干違うようです。その中で、ミシェルらの研究によって、少しずつ変わり始めていますが、まだまだ変えることに抵抗しようとする人たちがいることは、どの国でも同じような状況です。アメリカの上位中流階級の親たちは、子ども中心の生活を送っていると言われており、仕事から急いで家に帰り、子どもに捧げる最高に「充実した時間」を確保し、愛情とご褒美をたっぷり与え、子どもに好きなようにさせているようです。ですから、マクドナルドでハンバーガーが出来てくるまでの数分間さえ待てない子どもに、発作的な金切り声を上げ放題にさせている親の姿もしばしば見かけるそうです。一方、フランス式の育児では、未就学児もしっかり躾けるので、パリの洗練されたレストランに一緒に連れて行くことができ、両親が食前酒を楽しんでいるあいだ、子どもたちは見せかけだけでもおとなしく座り、インゲン豆を添えたステーキがくるのを待っていられるという評判だそうです。
   ある中国系アメリカ人の母親は、理想的な子どもを育てる上で禁止すべき事項について、友人宅でのお泊まりやプレイデイトという親同士の合意のもとに約束を取り付けて子どもたちだけで遊ぶこと、テレビ、コンピューター、ゲーム、Aよりも低い成績などからなる、長いリストを用意しました。これは、エイミー・チュアが、2011年に出版された著書「タイガー・マザー」の中で示した、バイオリンかピアノを弾くのに秀で、どの授業でもいちばんになりそうな子どもを育てるための基本原則だそうです。
 その十数年前、ジュディス・リッチ・ハリスは、同年代の仲間集団による社会化や遺伝子的特徴こそが子どもの人生を形作る二つの重要な要素ですから、親がどうやって育てようとあまり関係ないと主張しています。逸話や個人の意見の範疇を超えるためには、実生活でさまざまな子育ての条件下で起こることを慎重に操作した実験を行なわなければならなくなりますが、そのような研究は不可能であるとミシェルは言います。それでも、子育ての営みに関連した問いを投げかけ、その答えを得ることはできると言います。子どもにとって意味ある現実的な条件の下で、大人を手本とした短期間の実験をすればいいのではないかとミシェルは考えているようです。
   この見解について、私も「集団による社会化や遺伝子的特徴こそが子どもの人生を形作る二つの重要な要素」というところは同意するのですが、「同年代の仲間集団」だけではなく、「さまざまな年齢からの影響を受ける仲間集団」が必要だと思っています。更に「親がどうやって育てようとあまり関係ない」というところについても疑問を感じます。「同時に、育つ中での環境の影響が関係してくる」と思っています。親こそ人生の先輩であり、良きお手本だからです。

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