入園から2カ月が経ち、どのクラスの子ども達も毎日楽しそうな笑顔が見られます。特にひよこ組では先生にしっかりと抱きかかえられながら、心地よさそうにミルクを飲む姿も見られます。まだまだ、生活習慣は安定していないので、仮眠をしている子や、ミルクを飲みながらスヤスヤと寝てしまう子もいますが、園での食事やミルクは子どもがおなかをすかせた時間に合わせて提供していますので、穏やかな気持ちで食事をとっています。少しずつ色々なものに興味を持ち、遊びが充実してくると食事の時間も遅くなり、決まった時間にお腹がすくようになってきます。どの子も入園当初より一回り大きくなったように感じます。毎日楽しく過ごしながら、元気に成長してもらいたいです。
(おたよりの続き)
母乳について、授乳の考え方が少し前までは日本と西洋との違いが言われていました。アメリカ政府刊行物の育児案内書「インファント・ケア」の1914年に出された創刊号にはこう書かれてあったようです。
「赤ん坊は、生まれた時から、時計どおりに規則的に授乳すべきであり、授乳と授乳の間には、飲み水以外には何も与えられるべきではない。」
「育児の国際比較」(恒吉僚子・S.ブーコック編集)NHKブックスにはこう書かれていました。赤ん坊が空腹であろうと、単に甘えているのであろうとも、欲しがる時にはいつでも乳を与えられる日本のしつけと、一定の授乳や睡眠のスケジュールを生まれてすぐに、決め、赤ん坊がいかに授乳時間の前や就寝時間に騒ごうとも、その要求は満たされないとするアメリカのしつけを対置させています。しかし、戦後、アメリカの文化が入ってきて、その育児が理想かのように思われていた時代の日本では、時間を決めて授乳をしていました。少し前に聞いた話では、午前中の離乳食は、何時にあげましょうという育児書に合わせて、一生懸命に手作りで離乳食を作り、出来上がった離乳食をすべて赤ちゃんの前に並べ、スプーンに乗せ、育児書に書いてあるその時刻になると構えていて、時報と同時に口に入れる人がいるということでした。あまりに出来すぎた話ではありますが、実際にあった話だそうです。
しかし、最近の育児書では各国による差はたいしてないようです。どの国も厳密に時間を決めて乳を与えるよりも、赤ん坊の空腹に合わせた自己要求型の授乳を目指しているのです。では、なぜ日本では早くからそのような考え方であったのでしょう。「育児の国際比較」の本に書かれてあります。それは、日本庶民の子育ての伝統は、元来、欧米と比べた場合、授乳などに関して、子どもの欲求に応じようとする寛容なものであると言われてきました。赤ん坊が大人の背中におんぶされ、添い寝をされ、泣いてはあやされ、乳を含ませられる日本の育児のイメージは、子どもに早くから一人部屋を与え、「抱き癖をつけない」、「甘やかさない」というような欧米的な育児のイメージと対照的だとされてきたからです。そのような中で、「規則的に授乳」の発想も、子どもとは別個の親自身の生活を確保し、早くから規則的な身体の統制を教えようとする「欧米的」な子育て観に沿うものであると考えられてきました。 ですから、規則正しく授乳をするのは、子どものためだけではなく、母親の仕事を最小限に抑え、母親に休養と気晴らしの時間を確実に保障する意図もあったようです。
しかし、こんな風潮の中でも一時期日本でも育児書のバイブルになったスポックの育児書では、赤ん坊が空腹を訴えた時に食べさせるべきであることを訴えています。しかし、今は、そのスポックでさえ、赤ん坊の個性に配慮しつつも、親が特定のスケジュールに誘導すべきであるという考えは保守的であると言われるほど、寛容化しているようです。
育児方法は、どれが正しいというだけでなく、大人の都合や、また、科学の解明、外国の影響、粉ミルクや哺乳瓶など技術や道具などの発明によっても左右されるようです。子どもは大変ですね。
次回は6月15日ごろ載せます。