「子育て支援」の必要性が長く叫ばれてきました。それは、子育て支援センターのような施設だけでなく、保育園、幼稚園でもそのような機能が求められています。しかし、どのような親に対して、どのような支援をするのかということは、少しずつ変わってきているように思います。それは、親が置かれている社会の変化だけでなく、母親が子育てするのは本能であるという考え方が変わってきていることもあります。また、子どもは母親のもとで育てられるべきだという考え方も変わってきています。そこで、チンパンジーの研究から、子育て支援、父親の育児参加を見てみたいと思います。
授乳をすることが哺乳類の一番重要な特徴ですが、自然にその種にふさわしいような形で、授乳も含めた育児行動をどの個体もできるようになるかというと、多くの種でそうではありません。誰でも子育て能力は本能的に備わっているわけではないのです。それは、チンパンジーにおいても、ヒトにおいてもさらにそうではないのです。ですから、それを補っていくのが、その種それなりに、上手に育てないお母さんをどんなふうにサポートしていくかという行動の進化だそうです。京都霊長類研究所では、研究する中で、こう思ってきたようです。「チンパンジーのお母さんは、基本的には子どもを自分だけの力で育てます。けれども、ヒトの場合は、それをするには、あまりにもたいへんな子育てがお母さんに課せられてきました。これはヒトとなった時からそうなのです。独力で育てることの困難なお母さんに対して、ヒトという種は、その子育てを支える、援助する行動を種の特性として育んできたと考えられます。」
どうも、家族みんなで子どもを育てることが人間の特徴とすると、もっとも発達がかけ離れた1対1のペアによる母子関係だけで子育てをしているような最近の「家庭」というのは、不自然な形なのです。子どもは、母親からだけでなく、いろいろな人の中で育てられることが必要なのです。子どもには、いろいろな職種の人と関わりながら生活をし、学んでいくものです。松沢さんは、最近の子どもの虐待という深刻な問題の原因として赤ちゃんとのかかわり方で、何が不足しているかということに対して、「手のかかる子どもたちを育てるのは、お母さんだけじゃなくて、お父さん、おじいさん、おばあさん、兄弟、みんなです。共に育て、共に育つ。それが親子関係の基本だと思っています。では現代の日本が必ずしもそうなっていないならば、どこに原因があるか。はっきりしているのは、いまや3世代同居のような親子関係が消滅しつつあるということです。」と言っています。社会に向けての提言として、「現在の日本社会の親子関係が、かなり人間の本性と違ったものになっているとは思います。そうだとわかれば、人々の暮らしと自然の摂理とのかかわりをあらためて考える大きな切り口になると思います。」そうも言っていました。
園には多くのお父さんやおじいさん、おばあさんが顔を出してくれます。先日の運動会でも家族みんなで参加してくれました。誰か一人が大変な思いをしながら子育てをするのではなく、家族みんなで子どもの成長を喜びながらの子育てをしていけると良いですね。
これからの子育てと支援の仕方
2011.10.15