赤ちゃん研究

2つの運動

2012.05.11

 我々は脳のほんの一部しか使っていないといわれていますが、それは、将来いつか予期せぬ環境に出会ったときに、スムーズに対応できるための一種の「余裕」とも言われ、また、使いこなされている脳の能力のリミッターは脳ではなくて体にあるともいわれています。人は、感覚によって得られた情報を知覚し、身体運動との相互のやり取りによって認知能力が増していくのです。
 運動といっても、大きく二通りあります。この二通りの運動の移行が、発達に影響を及ぼし、そのスムーズな移行が保育の大切な課題になります。赤ちゃん特有の運動に「原始反射」という行動があります。この反射は、新生児や乳児に見られる、外からの刺激に対して意識の関与なしに起こる「無意識の運動」です。これは、「不随意筋」と呼ばれる筋力の作用です。赤ちゃんの手に触れると、その指を握ります。その行為は、赤ちゃんが無性にかわいく思える行動ですが、実は、握り返してくれているわけではなく、「把握反射」と呼ばれている無意識の運動です。また、赤ちゃんを抱き上げると、歩こうとするかのように足を前に出します。これは、「原始歩行」というやはり無意識の運動です。
 しかし、「胎児期の脳幹や脊髄の成長とともに原始反射は始まり、大脳の機能が進むことで生後しばらくすると自然に消えていき、代わりに、本人の意思によって手足を動かす随意筋が出現する」のです。この移行は、赤ちゃんは、経験からしていきます。たままた握ったおもちゃを、繰り返し握ることで次第に自分の意思で物をつかむようになっていきます。たまたま、クレヨンを持って描いた線や丸を、描くことを繰り返すことで、次第に自分の意思で線を描くことができるようになっていくのです。この時には、経験が大切であると同時に、「自発的な運動」が重要になるのです。一見何も考えずに、行動しているかのような赤ちゃんの動きですが、しっかりと自分が成長するために、一歩一歩進んでいるのかもしれませんね。

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