新たな年度になり、大勢の新入園児を迎えることが出来ました。この「園長日記」では、木月保育園で大切にしている保育について、専門的な内容を載せるようにしています。ちょっと難しい時もありますが、子ども達にとっては重要なことばかりですので、是非ともお読みいただきたいと思います。
さて先日、年長の子ども達は普段では見られないほどの緊張感の中、卒園式が執り行われ、どの子も元気に卒園していきました。その卒園児は長時間人の話を聞く力があり、それだけでもすごいことですが、そこで聞いた内容を実践することが出来る子ども達でした。あんなに小さくて、何にも出来なかった子が、いつの間にかこんなに立派になって堂々としている姿は、自信と希望が満ち溢れていました。
この事は、一見誰にでも出来ることを言っているように聞こえますが、今、なかなかこれらの力はつきにくい時代になっており、人との関わりの中でのみ付いていく力です。もちろん、大人の指示や命令によって、やらせることは簡単ですが、子どもが自ら行うことはとても難しい事です。入園式でも話しましたが、就学前での教育が、将来を決めると言っても言い過ぎではありません。小学校で行っている義務教育とは別に、就学前に学ぶべき、乳幼児にとって大切な教育があるのです。
どうか保護者の皆様もこれらの事を十分ご理解いただき、いつも探究心を持ち、何事にも意欲ややる気を持って取り組める力を育んでいきたいと持っております。今年一年もどうぞよろしくお願いします。
(おたよりの続き)
現在、日本でも5歳児の義務教育化が検討されています。しかし、保育所は規制緩和されているため、認証保育所など小規模保育所が特に都会では多くなっている中、5歳児だけ義務教育にするのは困難という意見もあります。また、小学校での教育の一部を、就学前教育の中に組み入れようという見当もされています。現在、小学校での教育内容が多くなり、子どもたちに1年生から負担をかけているということで、少し分散しようというのでしょうか。
このような検討は、ドイツでも行われました。ドイツでは、キンダーガーデンという3歳から6歳までの施設は、すべての子どもが通う「正規の施設」として認められるようになり、1965年から1980年の間に、幼稚園の就園率は32%から80%に上昇しました。それは、このキンダーガーデンが、学校教育システムの第一段階、「基礎領域」として認知されたということです。しかし、その際、専門家たちの間でとりわけ議論が集中したのは、5歳児問題でした。5歳児の教育は就学前施設で行われるべきなのか、学校においてか、あるいはそれとも移行クラスにおいてなのかという議論でした。
5歳児論争の背後に、日本では、子どもにとっての議論よりも、各省庁間、各施設間の綱引きの部分が影響しているような気がします。ドイツでも同じような綱引きの議論が起きるのですが、ドイツでは、学校教育的文化を支持する勢力と社会教育的文化とを支持する勢力の間の相互の綱引きがあったのです。つまり、5歳児の教育を学校教育の領域に取り込むのかそれとも、これまで通り社会教育領域において行うのかという論争です。それは、就学前教育を、義務教育、つまり学校教育の準備期として捉えず、社会教育の一つとして捉えていたからです。
日本ではこれらの話し合いがされる時、あまり話の中心に子どもは出てきません。しかし、ドイツは子どもの姿を中心に議論を重ね、結論を出しているようですね。子どもの将来に関わる重要なことには、政治的なこと、選挙で勝つための政策を除外しして、時間をかけてじっくり話しをしてほしいですね。
ドイツの義務教育の考え方について4月15日ごろHPに続きを載せます。