この議論を検討するために、1970年から1975年にかけて、5歳児にはどの設定での教育がもっとも効率的なのかをめぐって連邦政府主導で実験が行われ、結果的には社会教育を支持する勢力に軍配があがったのです。つまり、従来通り5歳児の教育はキンダーガーデンで行われることになったのです。それは、小学校に入学してから将来にかけて伸びていくのは、早く小学校教育を行うことではなく、十分に5歳まで幼児教育を行う方が効果的であるという結果を導き出したのです。
この議論は、単に5歳児をどちらが見るかということだけでなく、幼児教育とはどうあるべきか、という幼児期にふさわしい教育という問題を議論することになったのです。そして、最終的な解決として提案され、専門家たちの合意を得たのが、「状況的アプローチ」だったのです。そのアプローチは、幼児期の子どもを学習の主体として捉えることを基本にするものだったのです。それは、幼児期では、子どもたちの生活を大切にし、その生活の中の体験から学習していくという考え方なのです。
ドイツではこれで、幼児教育のあり方が確立したかのように思えましたが、出生率は低下し、就学前教育の量的な拡大は優先的な政策課題ではなくなってきました。さらに経済危機により、予算的にもきつくなり始め、就学前教育を推進する基礎的条件は失い始め、就学前教育に対する政策的、社会的風土は変化していきました。そのような状況の中では、質の議論は、理論的にも実践的にも十分に展開されることのないまま、いつのまにか議論の中心ではなくなり始めたのです。
しかし、1990年代に入ると状況は再び変化します。このときに要請されたのが、「幼児期の陶冶」の大切さであり、その考え方が本格化していき、バイエルン州では、「陶冶(とうや)プログラム バイエルン」の誕生をみるのです。
来月にも続きます(^_^)V