アメリカだけでなく、EUも理科離れの現状を危惧して、2001 年に「Science and Society Action Plan」を策定して、三つの基本的政策を提示しました。その1は、「科学技術という文化を欧州に育成すること」そして、「科学技術を市民にとって身近なものにすること」3つ目に「政策決定に科学の知識を活用すること」という内容です。このようなことを提示したのは、次のような認識があったからです。「市民が科学に対して積極的な理解を示さないこと」「女性は科学に向いていないという型にはまった考え方が女性を科学から遠ざけていること」「若者にとって科学研究の道を進むことが魅力的でなくなっており、将来、科学者や技術者の不足が危惧されること」などの認識が根底にあったからです。
子どもに科学する心を育てる施策は簡単ではありません。それは、今の子どもたちは、便利で豊かな環境の中で生まれ育ち、生活を支えている科学技術のほとんどは、自分たちの目では見ることができないため、科学技術の必要性をあまり感じなくなっているからだと言われています。このような現代の子どもに昔と同じメニューの実験をやらせて、40 ~50 年前の子どもと同じ好奇心や興味を抱くことを期待しても、それは無理なのです。
東京大学大学院教授の清水誠氏は、「20世紀は「科学する心」が必要性や好奇心から生まれてくる時代だったが、現代は子どもにとって科学への必要性が感じられず、神秘さや不思議さに好奇心を持ちにくい社会環境にあるため、20 世紀的な意味での「科学する心」はもはや芽生えにくい」と指摘しています。そこで、21世紀型の「科学する心」をどう芽生えさせるかを考えなければなりません。
例えばロボットは、今の子どもに科学技術の面白さと夢を抱かせ、その夢の実現のために理科や数学の勉強が大事ということをアピールしやすい分野であるのではないかと言われています。千葉工業大学未来ロボット技術研究センター所長の古田貴之氏は、「ロボットは物理や化学や数学の集大成で、ロボットを見せれば、『こんな所に数学が、こんな所に物理が使われている』といったことが見える。だから、夢のロボットをつくるために理科や数学をがんばって勉強しようというモチベーションがわきやすい」と語っています。このように、現代の子どもにとって、「科学する心」を芽生えさせるための格好のテーマを見つけていかなければならないのです。
21世紀は何をするにも難しい時代ですね。それでも、子ども達にとって最高の瞬間を与えていきたいと思っています。次回の「サイエンス」の時間も何が出てくるかこうご期待。