前回の内容では、体は食が育てるものだと言っていましたが、智と才も食養に関係し、智と才は表裏の関係だと言っています。「智は本にして才は末なり」と智を軽視しないようにして、カリウムが多くナトリウムが少ない食事によって智と才の中庸を得て、特に日本人のような穀食動物の資質を発揮するとしました。幼い頃はカリウムの多い食事をとることで、智と体を養成し、思慮や忍耐力や根気を養うとしたのです。また道徳心や思慮を必要とする場合もカリウムの多い食事にするといいと言い、しだいに社会人となるに従って、ナトリウムの多い食事にしていくことで、才と力を養成するとしました。これらのバランスが大切であるとしたのです。
明治になり、欧米の食習慣が日本に入ってきて、また、食についての学問も欧米に影響された状況に「日本を亡ぼすものは外敵ではない。それは西洋を知らず、また日本そのものをも自らよく知らず、日本びいきのくせに、内実は西洋文明にあこがれて、ことにその食生活を喜ぶ傾向にあるのは、西洋に身を売って生理的に西洋の植民地化をはかって亡びに至らしめる日本人自身がその元凶であることになる」と言うのです。
私は、これは、他の学問にも言えることのような気がしています。その地に伝わる文化、その地で発展してきた文明、特に、生活に密着する内容ほど、長い間にその地の風土が育ててきたものなのです。そして、その風土が、体をつくり、心をつくり、人を育ててきたのです。そのひとつが、育児なのです。私は、育児について、欧米の学問からだけを参考にするのではなく、もう一度日本で受け継がれてきたものを見直す必要があると思っています。
ちなみに日本の食育基本法の第7条にこう書かれています。「食育は、我が国の伝統のある優れた食文化、地域の特性を生かした食生活、環境と調和のとれた食料の生産とその消費等に配意し、我が国の食料の需要及び供給の状況についての国民の理解を深めるとともに、食料の生産者と消費者との交流等を図ることにより、農山漁村の活性化と我が国の食料自給率の向上に資するよう、推進されなければならない。」とあります。「和食」も世界遺産に登録されましたし、木月保育園の今年のテーマも「日本を楽しもう」です。
どうか、もう一度日本の良き食文化をご家庭でも見直し、子ども達の成長を支えて行きましょう。