4月当初、1歳児で主食のお米を食べられない子がいました。理由はたぶん(1歳児なので観察のみ)ご飯には濃い味付けが付けられていないからです。その証拠に、お味噌汁の中にご飯を入れて食べていたり、パンが出る時には、バターやジャムがぬってあり、食べやすくなっているからです。
そこで職員の中で、どのようにしたらお米だけでもおいしく食べるようになるのかという話し合いが持たれました。一口ずつ大人が食べさせたり、一口だけしか食べなくても良い等意見も出ましたが、ご家庭との連携の中で、今のうちは味がついている物なら意欲的に食べているので、様子を見ていこうということになりました。
すると、始めのうちはやはりお味噌汁に浸して食べている様子もありましたが、気が付くとお米だけでも食べるようになり、今ではモリモリお米を食べています。
小さい時の好き嫌いは大人のそれとは違い、食材に慣れていないことが多いです。食材そのものの味に慣れたり、調理の仕方によっても変わります。園では、様々な事を試してみることにより、その子が何を嫌がり、何に苦労しているのかを知ることが出来ます。その理由が分かり、子ども一人一人に対応していくうちに、段々と変化がみられることがほとんどです。
言葉の発せられない時だからこそ、丁寧に関わり、今も将来も楽しく食事が食べられるように、考えていきたいと思っています。
(おたよりの続き)
「日本人のひるめし」の著者である酒井伸雄氏は、学校給食は日本人全体の食の傾向にも大きな影響を与えていると指摘しています。学校給食の献立の中で、日本全国どこに行っても、カレーライスやハンバーグなどが幅をきかせるワンパターンの給食になるのは、必ずしも子どもの要求に応えるものではないと言います。学校給食では、作る側は子どもたちが食べ残すのを少しでも減らそうとするため、子どもが残さない味付けのもの、いいかえれば子どもたちが好きな料理を中心に献立をつくろうとするからだと言うのです。結果として、ラーメン、カレーライスという事になります。そのため、かえって幅広い食べ物を食べる機会が少なくなり、新しい味に対する学習の機会が減ってきてしまっていると言います。
学校給食では残菜をなくすことは、かなり優先順位が高い気がします。そこで、そもそも何のために給食を出すかという事を考えます。様々な食材を子どもたちが体験し、その食材を味わうために薄味にするとか、子どもが意欲的に食べるとか、楽しんで食べるとかする中で、結果的に残菜が少なくなるのであって、残菜をなくすという事は目的ではないのです。
こんな調査があったそうです。昭和55年(1980年)に農林中央金庫が調査をした「国民食生活と学校給食」です。この調査によると、学校給食の味付けは大切であり、子どもたちのその後の好みを左右するということが分かったのです。学校給食を食べていた時代に好きだった食べ物は、大人になった現在でも好きであり、学校給食での好き嫌いと現在の食べ物の嗜好との間には強い相関がみられたのです。学校給食を食べて育った人たちは、平均的に塩辛く、濃い味付けの食べ物を好み、食べ物に好き嫌いが多く、魚離れという傾向がみられるそうです。給食世代の好きな献立は洋風あるいは中華風の料理で、魚や野菜の煮つけや酢の物など和風のものを敬遠する傾向になるというのです。
最近の学校給食では、それが少しずつ改善されたメニューが多くなりましたので、保護者の皆様が育った時代では、この調査の結果のような傾向があるために、家庭で子どもたちが食べている物との給食や保育園での食事とはギャップがあるため、最初は残菜があるかもしれません。
しかし、給食は子どもたちが大人になった時の食生活に影響を及ぼしていきます。しかも、その中で最も影響を及ぼすものは、味付けではなく、実は食事に対する意欲かもしれません。いやいや食べさせられた経験は、大人になっても絶対に忘れることが出来ません。楽しく食べた記憶をどの子にも持ってもらいたいですね。
食育への取り組みについて8月15日ごろ載せます。