保育園には各クラスに多くのおもちゃがあります。それを子ども達はいつの間にか上手に使い、気が付くとビックリするようなものを作っている時があります。特に幼児組のお部屋ではぞう組を中心に遊びが発展していきます。そして、いつの間にかきりん組うさぎ組の子どもへと伝わっていき、「3歳の子どもなのに・・・!」というようなことをやっていることがあります。昔から「学ぶ」の語源は「まねる」「まねぶ」だと言われますが、どうも最近の脳科学の研究では鏡のように相手のことをまねる脳神経細胞があるようです。更に欧米で昔から大事にされていた「個性」も、実は大勢の社会があるからこそ育つようです。
(おたよりのつづき)
少子化が進む社会の中では、両親の就労の為だけではなく、保育園や幼稚園のような人と人が関わる場所が必要になってきます。
少子社会の問題は、コミュニケーション力と、社会のあり方に問題が起きるのではないかと思っています。そんなときに、赤ちゃんを観察することで、人はどのように自己を知り、他者を理解して、その後、社会をどのように形成していくのかに非常に興味を持っています。そこには、人類が過去に経験したことのない少子社会に直面している状況を、新しい科学的な解明を持って見つめ直す必要があると思います。それは、多子社会のころに構築された発達論や生活論、保育、教育の在り方だけでは対応できない部分を現場では感じてきたからです。その一つの解明の手掛かりを「ミラーニューロンの発見」からみつけることができ、個人的にとてもおもしろく、興奮してしまいます。それは、現場でどうしてだろうと思っていたことが、納得できる部分が多いからです。
現在、独創的な脳撮像実験を駆使して、ミラーニューロン研究をリードしている、イタリア生まれの神経学者であるイアコボーニ・マルコ氏が書いた「ミラーニューロンの発見―「物まね細胞」が明かす驚きの脳科学」 (ハヤカワ新書)では、ミラーニューロンについての最新の研究成果を、分かりやすくまとめて解説しています。この本の説明には、「“生物学におけるDNAの発見に匹敵する”と称される、マカクザルで偶然みつかったミラーニューロンは、他個体の行動を真似るかのように発火する脳神経細胞だ。最新の研究で、この細胞はヒトにおいても、共感能力から自己意識形成に至る、じつに重要な側面を制御しているらしいことが明らかになってきた。」とあります。
ミラーニューロンとは何かと言うと、ミラーは鏡のことですが、人間やサルがある行動を起こすときに脳のなかの運動に関する部分が働きます。そのきっかけは、自分の意思で運動しようとするだけでなく、他人の行動を見るだけでもその部位が活動しはじめるということです。それは、自分の行動に、どう他人が影響していくか、そして、その活動するニューロンによって、どのように人間同士がコミュニケーションをとるのか、人間社会を構成していくのか、そして人間とは何か、といった根源的な問題について、「謎解き」されてくるのです。
こんな例が挙げられています。夫婦などが長年一緒に暮らしていると顔かたちが似てくると言われていますが、これは、夫婦同士がお互いにミラーニューロンのレベルで模倣(脳内模倣)し合っているからだといわれています。この脳内模倣に続いて、大脳辺縁系の感情中枢に信号を送って、「共感」が生まれるのです。
では、どうやってミラーニューロンが誕生し、形成されていくのでしょうか。現在は、ある仮説がたてられています。それは、「赤ん坊が親と模倣し合う相互作用によって形成される」ということのようです。赤ん坊が笑えば、それに応えて親が笑う行動を繰り返すことで、赤ん坊の脳の中に親の笑顔を映し出すミラーニューロンが生まれるのではないかということです。そして、もっと正確に言うと、どうも、親ということではなく、最も身近な人間との相互作用から始めて、さまざまな他人と接してミラーニューロンによる模倣をし合うことによって、「共感」をベースとした集団の伝統や道徳を生み、文化を形成していく、と考えられているのです。
この話を聞くと本当に人間の脳ってすごなと思いますね。
ミラーニューロンについて2月15日ごろ更新します(^^)V