乳幼児教育

非言語コミュニケーション

2012.02.29

 保育室では時たま大きなトラブルもないのに子どもが泣いている時があります。原因不明で保育士も困ってしまいます。しかし、原因は不明でも理由は必ずあります。しかし、言葉でうまく伝えられなかったり、まだ話せなかったりすると、その理由を探るのはとても困難です。ただし、毎日その子と接していると性格や習慣などから大体の予想はつくようになります。一見同じように泣いているようですが、泣き方でわかる保育士もいます。反対に、なかなか理解してあげられず、子どもの要望に応えられない時もあります。その時は子どもへの質問しかありませんが、どの場合におきましても、その子の目を見ていると大体満足がいく対応が出来ているようです。
 大人が時間がなかったり、あわてていると上手にいかないものですが、「急がば回れ」ではないですが、じっくりと子どもの目を見ながら、あれやこれやと考えてみてください。今まで見えなかったものが見えてくると思います。

(おたよりのつづき)
  よく保育室内では職員同士が合図や目の動きでお互いを理解し合いながら保育をしている時があります。このような動きは一般的に「阿吽の呼吸」と言うのでしょうか、言語を持って自分の気持ちを伝えるのではなく、目とか、顔つきとか、体で、言いたいことを表現し、聞き手は、相手の身体的な表現によってその言いたいことを理解するということであると思います。いわゆる非言語コミュニケーションだと思います。チームワークの決め手は、自分のチームのなかで、どれだけ非言語によってお互いに考えていることを伝え、相手の言いたいことを理解するかということのような気がします。このコミュニケーションは、言葉をまだ話すことができない赤ちゃんとの関係においては非常に重要です。赤ちゃんは、声によって人に伝えようとするときには、泣くという方法でしかありません。あとは、体で表現するという方法です。言葉に頼ってしまっている大人にとって、その伝達では何を言っているかわからずに戸惑うこともしばしばです。しかし、母親は次第に赤ちゃんの泣き声から何がいいたいのがわかるようになってきます。
  それにしても赤ちゃんは耳を覆いたくなるほど、みんなが振り返るほどの大声で泣きます。みんなが振り返るほどというのは、多くのほかの人にも泣き声が聞こえてしまうということです。それは、赤ちゃんは、自分の居場所を母親に伝えるためでしょうが、その場所は、母親だけでなく、襲うであろう敵にも知られてしまうことになります。これは、古代であれば非常に危険な行為のはずです。それなのに、どうして人間の赤ちゃんは大声で泣くようになったのでしょう。それは、たぶん、赤ちゃんが安心して泣くことができる空間と環境の中で育てられてきたということでしょう。安心して食事をしあえる集団を共食関係といい、その関係が家族を作ってきたので、安心して食事を食べることができるということは、安心して声を出しても大丈夫だということです。
この外敵に襲われる危険性が減ってきたのは、人類が共食という形態をとる集団生活を営むようになったからです。そうなると、赤ちゃんは大声でいろいろな泣き方をするようになっていったのです。しかし、それは、単に自分が困ったから泣くのではなく、「赤ちゃんが泣き声をつかって親をあやつるため」ということから、人類が言葉を使うようになっていく機能をつけて言ったのではないかということを岡ノ谷一夫氏が、著書「言葉はなぜ生まれたのか」の中で書いています。
  赤ちゃんは、大きな声で泣いて意思表示をし、いつも親に世話を焼いてもらうほうが生存に有利であることを知っていて、親をコントロールしているといいます。「ミルクがほしい」「おなかが痛い」「寒い」など、いまの自分が抱えている問題をすぐに親に伝えられれば、親はその問題を解決するようにしてくれるでしょうから、赤ちゃんが死ぬ確率が低くなります。岡ノ谷氏は、「赤ん坊が泣いて親をコントロールしている」という仮説を立てています。その裏づけとしてこのような現象を挙げています。泣き叫ぶ赤ん坊を放置しておくと、泣き声にだいぶ変化が現れてきます。生後2ヶ月の赤ん坊でも、生後1日目ぐらいの単調な泣き声に戻ってしまうというのです。いくら泣いても親がかまってくれないのだから、泣き声をあげても意味がありませんし、疲れるし、無駄なことだと思って、泣き声が単調化し、生後すぐの状態に戻ってしまうというのです。この戻りがその後の発達に大きな支障をきたすことになります。だからどんなに忙しくても、どんなに耳が痛くなっても、赤ちゃんの切なる訴えに耳を傾け、しっかりと関わってあげることが大切です。反対に、この時にしっかりと関わってあげることにより、親への安心感がこの先の発達である自我の目覚めへとつながっていくのです。

言葉の必要性につきまして3月15日ごろ載せます。

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