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父親の育児への貢献度

2014.03.31

 今年も新しい年度がスタートしました。たくさんの新入園児が入園し、にぎやかな毎日が始まります。0歳1歳の保護者の方は、初めての子育てに日々奮闘している方も多くいると思います。そのような中に、また一つ、保育園に預けながらの育児が加わります。朝はお父さん、夕方はお母さん、と役割分担をしている家庭も多いでしょう。園での生活は時には子どもが熱を出すこともあります。そのような時に、祖父母がいればお願いすることもできますが、たいていの場合は、どちらかが迎えにいかなければなりません。
 このように園での生活一つ取っても、お父さんの力はもちろんのこと、多くの人の手を借りないと育児が難しくなっています。一人で子育ては出来ません。保育園としましても出来る限り、みなさんと一緒に子ども達の育ちを支えていきたいと思っています。どうか、楽しく保育園に通っていただきたいと思います。

(おたよりの続き)
  育児で最近話題になっているのは、父親の育児参加です。「イクメン」という言葉も当たり前に使われるようになってきました。
生き物のなかでも多くはメスが子育てをしますが、中にはオスが育児をする種とか、オスとメスが協力して育児をする種とか、両親とも全く子どもをかえりみず他の種に子育てをさせる種まであります。その中で、人類はどの種に近いのでしょうか。
 世界的大ベストセラー「銃・病原菌・鉄」の著者であるジャレド・ダイアモンド氏が、その著作「昨日までの世界―文明の源流と人類の未来」というなかで、過去1万1000年にわたって世界中の民族がどのように人間文化を築いていったかというテーマについて、いくつかの視点から伝統的社会を理解しようとしています。
ジャレド氏は、この著書の中でこう分類しています。極端な例としてダチョウやタツノオトシゴをあげています。彼らは、メスが産卵し、あとはすべてオス任せです。一方、多くの哺乳動物と鳥類の一部は、それと対極で、オスは、メスとの交尾をすめば、あとはすべてはメスに任せ、オスはまた別のメスを追いかけ、子どもの養育に関与しません。サルや類人猿にはこの両極端のあいだにおさまる種類が多く、どちらかというと哺乳動物の習性に近いと言います。父親は、母親や子どもたちと一緒に暮らしますが、集団構成の観点からは、母親と子どもたちの集団のなかに父親という存在が加わり、もう一つ大き目な集団が形成されるといった形態に近く、子どもを部外者たちから保護する程度は担うものの子どもの養育や世話への関与はほとんど見られないのです。
 では、人間の父親はどうかというと、子どもに関わる程度はダチョウのオスより少ないが、類人猿や他の霊長類のオスに比べれば多いのです。たしかに、父親が赤ん坊の世話に関しては、母親より面倒見が悪いのですが、父親が子どものために重要な役割を果たしている社会が大半だと言います。社会によっては、生物学上の父の死とともに、その実施の生存率も低下するといった現象がみられるくらいだそうです。父親の存在には、どうも、食事を与えるとか、おむつをかえるとかいうだけでない大きな役割がありそうです。
 同じ人間社会といっても、その生業形態や生活形態によって違うようです。父親が最も子どもの養育に関わるのは、女性が食料の大方を調達する社会であり、女性の時間は食料の調達に割かれている場合だそうです。たとえば、アカ・ピグミー族では、森のなかで食糧を採集するのも、網を使っての狩りに参加するのも、母親の仕事であるため、当然、父親が積極的に子どもの養育に関わるそうです。このように、牧畜民の社会と狩猟採集民のそれとのあいだで、父親の子育てへの貢献度と女性の食糧確保における貢献度の平均値を比較した場合、どちらの貢献度も狩猟採集民の社会の方が高いそうです。また、男は戦士として戦うものであり、それに時間を割くものであるという自負が男性の間に浸透しており、攻撃的な他の男性から家族を守ることこそが男の仕事であると思っているような社会では、父親が子どもの養育に関わる傾向が少ないようです。この社会のように、男と女の役割分担がはっきりと分かれている場合、男性は少年を含めて男性だけで生活をし、女性は女性だけで一緒に暮らすという部族もあるようです。
 このように、伝統的社会における父親の育児への貢献度を見ると、日本では最近父親の育児参加が叫ばれるのは分かりますね。戦時中における男性の戦士としての役割が強かった時代、国を守ることこそが男の仕事であると思っていた時代では、とうぜん父親の子どもへの養育に関わる傾向は少なくなるのは当然でしょう。また、男性だけが働いて、食糧確保の役割を担っていた時代では、母親が中心になって子育てを担うのは当然だったのでしょう。しかし、現代の日本では戦争はなくなり、男性だけが社会とかかわる、食糧を確保するわけでもなくなった社会では、男性も育児に貢献しなければならないというのは当然でしょう。まさに保育園に預けるご両親は、「夫婦共働き」であると同時に、「夫婦共子育て」ですね。毎日が大変ですが、同じ分だけ喜びと感動がきっとあります。

 

 父親以外の養育者について4月15日ごろ載せます。また見て下さい(^^)V

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