どんな活動が提供されようと、グループの子ども全員が知りたがり、やりたがるという事はあまりありません。先生が用意した活動にグループ全員の参加を強制してしまうと、自主的な判断を育成するという発達目標に反したものとなってしまうからです。どの子の発達にも独自性があります。それぞれの子どもは、様々な能力や動機付けを抱いて学習の場に挑むのです。「何もしたくない!」「どれもいやだ!」と言う子に対して、それをどのように保障し、また、自発的な活動に持っていくかは悩むところです。
園でも、何もしたくないという子がいます。その時に、その子の思いにいくつか考えられることがあると思います。まず、用意されたもの以外にやりたいものがある場合です。その思いを表明する権利が子どもにはあります。それは、必ずしも叶えてあげるというのではなく、どうしたら叶えてあげられるのか、どうして今はかなえてあげられないのかをきちんと子どもと一緒に考えることが必要だと思っています。「これとこれだったら用意できるよ」「この活動が終わったら一緒にやろう」というように出来る限りの対応により子どもの気持ちは満たされていきます。
もう一つは、何もやらないということを選択している場合です。大人でも、何もやりたくない気分の時もあります。いつでも、1日中テンションが上がっていることがいいわけではなく、1日の生活のリズムの中で、何もしない時間、ぼーっとすることができる時間も必要です。保育室の中は、子どもたちがやりたいと思ったことをやることができる場所が用意されていますが、やりたくないと思ったことをやれる場所の用意も必要です。
もう一つは、何でも拒否をするという、いわば、ある意味の抵抗を示す場合です。その場合は、家庭に問題があるかを考えます。家族のふとした言葉がけが、園や学校での子どもの選択に大きく影響してしまうことがあるからです。「いい服なんだから気を付けて」「男の子はお料理なんてしないのよ」「女の子はクモやミミズを怖がるものよ」などと言った親のメッセージを、直接、間接に受け取ったとします。そうすると、行動がとても強く抑えられてしまう可能性があります。こうしたメッセージは、楽しい体験をしてみたいという子どもの興味をも抑制してしまうかもしれないのです。この視点は、とても大切です。そういう意味でも、園と家庭との連携が不可欠なのです。
他には、以前に何かをやって失敗したとか、怖い思いをしたとか、何か心のトラウマがあることもあります。それは、自発的に何かをするときの妨げになることが多いかもしれません。こんなこともあるのではないかということが紹介されています。「子どもには、何かを発見することよりも優先度の高い欲求が存在することもあります。家でさびしい思いをしている子どもだと、特定の友達と学校で遊ぶことが何よりも大切だと感じているかもしれません。そのため、その友達がいる時だけしか、活動に参加しようとしないのです。また、疲れていたり、おなかがすいていたり、体調が悪い子どもは、先生がどんなに楽しい事をやって見せても興味を維持できないでしょう。
これらのように、子どもの「いやだ!」という中にも、様々な事情が含まれていることを考えなければ、その対応は逆効果になることがあります。日々の活動をいつも拒否する子どもがいるようなら、拒否する理由を考え、参加しやすくする方法を考える必要があります。その子に、その日の活動の準備を手伝ってくれるように頼むだけでもいいかもしれません。子どもは自分が準備を手伝った活動には、特に興味を抱くものです。他にも、こんな方法が紹介されています。子どもが努力して学んだり、問題を解決したりする様子を先生が評価すると、子どもを活動に参加させることに良い影響を与えるようです。また、前向きな姿勢がはぐくまれ、子どもは学習者としての自分に自信を持つことが出来ます。この自信を持つことは、その子の情緒を安定させ、もっと知りたいという興味を持ち、努力し続けることができるようになるのです。
大人の関わりは子ども達に対してとても大きな影響を与えます。もちろん、良い事も悪い事もです。だからこそ、上記のような子どもの心理や発達を十分理解した上で、関わることが出来れば、もしかしたら、子ども達は今よりももっとどんな活動にも意欲的に、積極的に関わることが出来るかもしれませんね。
どうかご家庭でも、ハンズ・オンとハンズ・オフを心掛けてみてください。
グループ内のオンとオフ
2015.11.14