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「過干渉と自立」 

2017.01.31

 今日は幼児組のホールに来てみました。お昼寝の時間も終わり、少しずつ子ども達が目を覚まし、お着替えを自分でしてから起きてきます。
 今年の年長の女の子は随分前からこのお着替えの時間にやってきて、上手にお着替えが出来ない3歳児のお手伝いをしてくれます。最近では殆どの年長の女の子がお手伝いに来てくれて、困っている子を見つけては手伝ってくれます。
 その様な中、3歳の女の子Aちゃんのお着替えを手取り足取りやっていたBちゃんに向かって、同じく年長のCちゃんが言いました。「Bちゃん、そんなにやってあげたらAちゃんが1人で出来なくなっちゃうよ」「わかったよ」と言って、Bちゃんは出来るだけ手を貸さない関わり方に変えました。
 実はCちゃん、以前Aちゃんに関わっていてBちゃんと同じように、手取り足取り何でもやってあげていました。しかし、ある時にCちゃんは気が付きました。それはAちゃんが以前より何もやらなくなってきたことに・・・です。今までは自分で出来ることも多かったのですが、Cちゃんが関わるようになってからは、任せっきりになってしまったのです。それに気が付き、Cちゃんはその日以来、関わり方を変えたと言っていました。
 とかく、赤ちゃんは何もできないとか、子どもはなんでもやってあげないとっと思いがちです。しかし、それは本当にそうなのでしょうか・・・?
 「少子化」という言葉が使われ始めてから随分と時間が経ってきましたが、昔のように兄弟が多くて1人の子に手がかけられなかった時代と大きく変わり、現代は、1人の子に対して、手もお金も多くかけることが出来る様になってきました。その影響で、かける必要のないところまで手をかけ、過干渉(手をかけすぎる状態)になってきたと言われています。過干渉になって、本来、子どもが育つべく心や力が十分に育たないということも起きています。
 どうか、何でもやってあげるという習慣を一度見直し、子どもの力を信じてやらせて見てください。期待以上に成長する姿を見ることが出来ると思います。

(おたよりの続き)
 随分と前から少子化の進行が騒がれています。多くの人々は、将来の我が国における人口減少の面に関心が向き、そのことに対する施策の議論が盛んに行われています。今、大切なことは、少子社会にあっても、子どもたちが自立した存在として希望をもって生きていけるよう、我々大人が自覚をもって育てていくことであり、国民一人ひとりが自立について考えることです。
 自立支援の検討会では「自立とは、成長していくプロセスも含むものであり、そのプロセスを支える基礎となる」とあります。私は、ここのところが最も重要だと思っています。自立は、成長していくプロセスなのです。自立だけでなく、最近、教育の中で論議されている「愛国心」とか「道徳心」とかも成長プロセスなのです。何歳になったらできるとか、何歳から教えるとか言うものではありません。ですから、難しいのです。覚えこませてできるなら簡単ですし、教えるならいつ教えればよいかということを決めて、一斉にできます。しかし、成長となると、生まれた瞬間から重要ですし、個々によってその過程は違ってきます。ですから、この「自立」は、乳幼児の時からの教育として重要になるのです。
 自立を困難にする背景として、家庭における子育ての問題が挙げられています。そのなかで、核家族化の中で祖父母からの知恵の伝達がなくなったこと、親の養育力の低下により過干渉や放任が多くなったこと、父親の育児参加不足などがあげられていますが、これらは、少子社会の問題ではないと思います。もちろん、関係はしていると思うのですが。考えなければいけないのは、子どもの数が、家庭の中、地域の中で少ないということです。そこには、大きくふたつの意味があります。ひとつは、子ども集団がなくなってきて、そこから学ぶ機会が少なくなってきたこと。もうひとつは、親子の距離が近くなりすぎてきたことです。ドイツのミュンヘンでは、3歳まで取れた育児休暇を18ヶ月にする様になりました。私は、これは最初、後退かと思ったのですが、少子社会では、3歳まで、家庭に置くと、母親とだけ接する様になってしまうので、集団の意識ができてくる18ヶ月くらいから子ども集団に出すべきだと思っているからだと思います。
 多子社会では、自然と社会の中で子どもが走り回っていたけれど、少子社会となり、その様な機会がなくなってしまったなら人工的にもう一回、自然や社会を取り戻さなければいけない。その社会が、ある意味で幼稚園や保育園だと思うのです。昔は否応なく子どもと親との距離が離れざるをえないこともありましたが、今は自分の意思で距離を決められる。だから簡単に母子で密着できてしまいます。それを適当な距離にするのは園の役目です。子ども達は0歳のころからいろんな大人と異年齢の子どもの中で育っていきますが、3歳になると今度は子どもだけの集団も必要になる。だからそこに移行することを保障していかなければならないのです。ただその時に常に特定の大人とだけでいるようであればそれは問題です。3歳までお母さんと二人きりで3歳から突然、さあ子ども同士でと言われても難しいと思います。
 子どもは自ら育とうとする力を持っています。そうは言っても、1人で大丈夫なわけではありません。社会という、大きな人間関係の場での経験が「自立」を助けます。手をかけすぎず、ゆったりと「見守って」いきたいですね。

「見守る」ことについて2月15日ごろ載せます。

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