保育園にはたくさんの先生がいますが、多くの子どもは、先生から多大な影響を受けます。例えば0歳児の頃から「模倣」と言って人の行動を真似るということをする様になります。すると、そのことを意識して先生も手遊びなどをしながら、少しずつ真似てもらうようにします。そして、その「模倣」が様々な行動のきっかけとなり、日々の成長へとつながっていきます。その事は家庭でも同じです。両親の行動をよく見て真似をして、少しずつ成長していくのです。
しかし、この「模倣」は必ずしも良いことだけを真似るというものではありません。厄介なことに、悪いところも真似てしまうのです。なので、例えば箸を上手に使えない子どもの両親を見てみると、ほとんどの場合、両親のどちらかは箸を上手に使うことが出来ません。いつの間にか「模倣」を行い、気付かぬうちに真似をしているのです。
更にもっと恐ろしいのは、この「模倣」は運動面だけのことではありません。日々の生活や態度、性格まで真似てしまうのです。しかも「三つ子の魂百まで」のことわざのように、小さなうちから良い面、悪い面両方をコピーしてしまうのです。
そう考えると、社会人の先輩としてわれわれ大人は、子ども達に見られているという事を常に意識して、どう振舞わなければいけないかを考えながら行動する責任があります。良き行いを自ら実践し、子どもの手本となるような大人が増えてくると良いですね。
(おたよりの続き)
子ども達は多くの場面で、我慢を強いられることがあります。例えば「このお菓子は今は食べちゃいけませんよ」と言われた時、大人も同じように我慢している場合と、横で大人だけはお菓子を食べている場合、子どもはどのような反応をするのでしょうか?きっと、日ごろから厳しく躾けられている家庭では、大人の言ったとおりにするかもしれませんが、そうでない場合は、「大人だけずるい」と言って、大人を真似てお菓子を食べ始めるのではないでしょうか。
もちろん、上記には「子どもが食べられないものが入っている」や「今食べたらこの後の食事が食べられない」等、色々な条件があるかもしれませんが、それらの条件が一切なかった場合においてではやはり、大人の真似をしてお菓子を食べてしまうのではないでしょうか。
躾けに関しては、各家庭ごとに、それぞれ違います。そして、その根底には、両親がそれぞれ育った家庭の影響を多く受けているはずです。その暗黙のルールを元に、子どもへの躾がされているのです。
ミシェルが、この分野で興味を持つようになったのは、彼の娘さんが小学校に入学して早々に、とても自慢の作品を家に持ち帰った時のことだそうです。それがきっかけとなり、幼いころから自分が成し遂げたことに対してどのように価値基準を設けるのか、そしてその基準を満たしたとき、どのように自分にご褒美を与えたり与えなかったりするのかを調べるために、一連の研究に取りかかったのです。
そして、次のような疑問に取り組むことになったそうです。「こういったかたちの自己報酬や自己制御を導く社会化の経験や、暗黙のルールとは何だろう?」「子どもが“意志疲労”を起こして、自分はよくやったと喜び、少々自分を甘やかしてご褒美を上げる頃合いだと判断するのはいつだろう?」「もっと厳しい基準を満たすまで粘って、欲求充足を先延ばしにするのは、いつだろう?」「それとも、努力を続けること自体が喜びになるのだろうか?」
モデルは、私たちがどんな人間になるかに多大な影響を与えるので、私たちが子ども時代から、自分自身を評価したり調整したりするために発達させる価値基準が、モデルによってどう導かれるのか、というようなことをミシェルは研究したくて仕方なかったそうです。大人のモデルの特徴や行動は、幼児が何を習得したり、真似たり、ほかの幼児に広めたりするかに影響を与えます。スタンフォード大学で、ミシェルは学生たちと、マシュマロ実験の研究と同時に、子どもがどうやって自己基準を獲得するのかを調べる実験を開始したそうです。この研究では、モデルの特性や自己報酬の行動に変化を持たせて、大人が部屋を出ていったとき、幼児たちが自分の基準に取り込んだものに大人がどんな影響を与えたかを調べたのです。
調査は、大学のそばにある地元の複数の小学校から、4年生の少年少女を選び出して行なわれました。個別のセッションで、子どもを一人一人、モデル役となる若い女性に引き合わせ、女性は子どもに「一種のボウリング・ゲーム」を見せます。子どもたちがどれだけそのゲームを気に入るかを、おもちゃ会社が調べているということにして、調査をしたのです。
そのゲームとは、長さ1メートル弱のボウリング・レーンの小型模型で、1投ごとにスコアを示す電光表示板が先端についています。レーンの先のピンが置かれる場所は遮断されていて、プレイヤーにはボールがどのピンに当たったのかが見えないようになっているため、結果を知るには、電光表示されるスコアが頼りでした。このスコアはあらかじめ設定されており、実際の成績とは結びついていませんでしたが、プレイヤーが信じて疑わないようにうまくできていました。すぐ手の届くところには、大きな器があって、チップがたくさん入っており、子どもやモデルの女性が成績に応じて自分へのご褒美として使えるようになっていました。チップは、ゲーム終了時に価値ある賞品と引き換えることができ、多ければ多いほど良い賞品がもらえると子どもたちには伝えます。きれいに包装された賞品が、部屋のよく見えるところに置かれていましたが、それについて説明はしませんでした。
ゲームは、モデル役の女性と子どもが一度に一投ずつ交替でプレイしました。さまざまな子育てのスタイルをシミュレーションするために、モデルが自分の成績に対してどのように自分にご褒美を与えるのか、そしてまた、どうやって子どもに自分の成績を評価させたり、自分にご褒美を与えさせたりするのか、三つの異なるシナリオを考えておきます。どの子どもも、これらの条件のうち一つだけに参加しました。
どのような結果が出るか楽しみですね。
9月15日ごろその結果について載せます