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「自分の目標」

2018.03.10

 ミシェルは、目標を首尾良く追求するのには、自制のスキルが欠かせませんが、私たちに方向性や動機付けを与えてくれるのは、目標そのものであると言っています。目標は、人生に対する満足感の重要な決定要素で、人生の初期に選んだ目標は、私たちが達成するのちの目標と、自分の人生について覚える満足感の両方に、驚くほどの影響を与えると言います。人生の物語を推し進める目標は、どのように形作られたかには関係なく、その目標を達成しようとするときに必要とする実行機能に劣らず重要だとミシェルは主張しているのです。
 自制は、「骨の折れる制御」というレッテルを貼られたときには特に、過酷でつらい努力を要するかのように聞こえかねないとミシェルは危惧します。禁欲的で、将来のために生き、今このときの快楽を味わい損ねる働きづめの生活に、自ら飛び込むようなものというわけだと説明しています。
 彼の知人が、こんな話をしてくれたそうです。最近、マンハッタンで友人たちと夕食をとっていたときに、マシュマロ・テストが話題になったそうです。友人の一人は、グレニッチヴィレッジに住む小説家で、彼は自分の人生と、投資銀行家として成功している大金持ちの兄の人生とを比較したそうです。ピンストライプのスーツを着てエルメスのネクタイを締める生活をしている兄は、結婚して久しく、子どもたちもそろって良い暮らしをしています。弟の小説家のほうは、小説を5冊出しましたが、ほとんど話題にもならず、ろくに売れませんでした。それにもかかわらず、昼間は執筆し、夜は独身生活を楽しみ、次々と短い恋愛関係を重ねながら、自分は素晴らしい時を過ごしていると言っています。まじめで、かたぐるしい兄がマシュマロ・テストを受けたら、おそらく永遠に待ち続けるでしょうが、自分ならさっさとベルを鳴らすだろうというのが、彼の推測でした。
 実際には、この小説家はかなりの自制心がなければ本を5冊も出版できなかったでしょうし、自分を縛るような関係を誰とも結ばずに、楽しい付き合いを維持していこうとする上でも、おそらく自制は必要でしょう。それに、クリエイティブ・ライティングを重視するリベラルアーツのエリート校を卒業するというのも、自制心が相当なければできないことだとミシェルは思っています。芸術の世界で創造的な生活を送るのには、ほかのどんな分野での生活で成功を収めるのとも同じぐらい実行機能が必要とされると言います。
 しかし、目標が違うというだけのことだとミシェルは言います。実行機能がなければ、自分の目標を見つけて追い求める機会は失われます。しかし、抗い難い目標や動因がなければ、私たちは実行機能があっても力量をもてあまし、目的もなく、さまよいかねないと注意しています。
 人の人生は、それぞれ違っていますが、それはその人自身のものです。しかし、どのような人生を送ろうとも、自分ながらの人生を送るためには、実行機能が必要になります。そして、この実行機能は、遺伝子に書かれているものではなく、大人になってからも育むことが可能なのです。それには、熱烈な目標を抱くことが大切です。この目標は、私たちに方向性や動機付けを与えてくれて、目標を首尾良く追求するための自制のスキルを持たせてくれるのです。
 時にはじっと待ち、時には大胆に実行する力、どちらもバランスよく持つこと、そして、その力に気づくことが大切ですね。
 新1年生になるぞう組の子ども達が、小学校においても、上記のような行動がとれることを心より応援しています。

平成30年3月吉日

園長日記 完

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