前回、載せた、まったくものまねをしなかった動物に対して、人はどうだったのでしょう。当然のように人間は、指さしや物まねといった身振りを、自然でわかりやすい方法だと考えます。どの国のひとでも、どのように文化が違っていても、ヒトは指をさすと、その先を見ようとします。海外に行って、その国の言葉を理解できないときでも、その国の人と慣習は違っていても、多くの旅行者は自然に意味を持つ形式である身振りコミュニケーションに頼って、何とか旅を続けることができるのです。同じように、どんなに小さい子でも、言葉をまだ話さない乳児でさえ、指さしや身振りと使うと理解します。また、騒々しい工場の中とか、声が聞こえないようなガードの下など言葉では伝えられない状況では、人間は、自然に指さしや物まねでコミュニケーションを行ないます。
トマセロは、人間がどのように言語を使って互いにコミュニケーションを行なっているのか、そしてこの能力が進化の過程でどのように発生してきたのかを理解するために、まず人間がどのように自然の身振りでもって互いにコミュニケーションしているのかを理解する必要があると考えています。そして、人間特有のコミュニケーションの最初の形は指さしと物まねだったという仮説を持っています。その指さしや物まねは、慣習的言語を作るのに必要な、人間特有の社会的認知と同期の大部分をすでに具現化していると考えているのです。
赤ちゃんの成長や変化はそれだけで、可愛く、嬉しいものですが、人類の進化や発展という見方をしていくと、さらに興味深いですね。
「コミュニケーションと人類の進化」
2016.06.11