子どもは、最初は、他人が持っているものに興味を示します。同じものを自分が持っていても、それを握りしめながら他人が持っているものを欲しいと思います。それは、大人が持っているものでも、それを欲しがります。しかし、しだいにものではなく、他人がやっていることに興味を持ちます。何をしているのだろうかと覗き込みます。それが面白そうであると、自分でもやってみようとします。いわゆる「真似をする」のです。
「積み木は、創造力を養います。」といううたい文句があります。それは、生きていくうえで、そうすることは重要であり、「ヒトは、創造する生き物である」ともよく言われます。昔読んだ本でこのような事を言っていました。「“創造”は時として“模倣”の対極にあるものとして語られることがあります。他人のまねをすることは、創造性がないと思われることがあります。また、きちんと自分ができていないうちに真似てしまうと、自分を見失ったり、自分がなくなってしまうと考える人もいます。それは、「独自性」を掲げる人たちの多くに見られるような気がします。」 しかし、最近の研究では、比喩や類推の基盤になる脳の中の配線が高い創造性をもっていることが分かってきています。つまり、真似をすることが創造力に結びつくということです。ですから、人類は、赤ちゃんの頃から真似ようとするのです。積み木で、自分で想像力を駆使して作品を作るためには、まず、他人のまねをする必要があるのです。ですから、積み木と自分がにらみ合っているだけでは、想像力は養われないのです。積み木を、集団で遊ぶということは、一緒に作品を作ることからではなく、隣で何かを作っている他人を見ることから始まるのです。隣で積み木を作っている他人を見るとき、自分より優れていると思うものを作っている他人を見るとその刺激はより大きくなります。逆に、なかなかうまく作れない子を見ると、助言なり、手伝ってあげたくなります。それらの姿は、異年齢との関係の方がより多くみられます。異年齢に中では、より刺激が大きくなるだけに発達もより促されます。
しかし、一緒に物を作ろうとするときは、同じ年齢で協力するところから始まります。それは、能力的にはほぼ同じですので、協力というときに対等に役割を分担することができるからです。これは、0歳児クラスから1歳児クラスあたりに見られる行動ですが、こんな姿、今は保育園でしか見られないかもしれません。それは、0歳児から、隣にいて、生活を共にし、同じ積み木で遊んできたからでしょう。3歳からしか一緒に物を作らないから、集団は3歳からでいいと言うのは、子どもの姿をよく観察していると間違っているというのはわかると思います。 子どもたちがレンガブロックで遊んでいるときに、共同で作品を作るときの特徴があります。それは、作品が高く作られるだけではなく、平面に広がるブロックだから行われることかもしれません。隣で作っている異年齢の子の作品を見て、それに助言をし始めると、それまで自分で作っていた作品とつながりはじめるのです。いわゆるコラボが始まるのです。そして、しだいに作品が大きく広がっていくのです。それは、まさに一つずつの脳の神経細胞であるニューロンが、シナプスという結びつきが始まることによってより高度な脳の機能を持つことと同じような気がします。
このダイナミックな営みこそ現代の子ども達にかけている関わりなのです。今、小学校教育でも、子ども同士の関わりを増やすようなカリキュラムが提案されています。遊びを通してつながる子ども同士の関係をこれからも意識的に増やしていきたいと思っています。