ある朝のこと。
すくすく組のAちゃんが、マグネットのオモチャをくっつけ、何かを作って遊んでいました。
それをじーっと見ていたよちよち組のBちゃん。
お姉さんが遊んでいるオモチャに興味を持ったのでしょう。
BちゃんはAちゃんが使っていたオモチャを取り、てくてく歩いて行ってしまいました。
何も言われずに、急にオモチャを取られてしまったAちゃんは、泣いています。
「そっか、オモチャ取られちゃったんだね。悲しかったね」
私はAちゃんに声を掛けました。
Bちゃんは泣いているAちゃんをチラッと見ましたが、そのオモチャを握りしめたままです。
「Aちゃんが使っていたね。悲しいね。」
そっとそばに寄って声を掛けましたが、私はそのまま様子を見守っていました。
Aちゃんは泣いています。
すると…。
Aちゃんの近くで遊んでいた、同じくすくすく組のCちゃん。
自分が使っていたオモチャを、そっとAちゃんに手渡しました。
そのオモチャは、AちゃんがBちゃんに取られてしまったオモチャと同じもの。
Aちゃんはニコッと笑って、もらったオモチャで遊び始めました。
Aちゃんの笑顔を見て、Cちゃんも笑っていました。
「Cちゃんが貸してくれたの!!良かったね♪」
声を掛けると2人とも嬉しそうです。
オモチャを取られてしまった時点で、
「Aちゃんが使ってたよ」
そうBちゃんに伝え、返してもらうことも出来ました。
でも、もしそうしていたら、
AちゃんとCちゃんの関わりは見られませんでした。
0歳児クラスと1歳児クラスが同じフロアで生活している木月ほほえみ保育園では、今回のように、すくすく組の子が、よちよち組の子にオモチャを取られてしまうことがしばしばあります。
でも、そんな中ですくすく組の子どもたちは色々考えて行動しています。
例えば、よちよち組の子が自分のオモチャに興味を持っているな、と感じた時には、自分が使っていないオモチャを手渡し、興味をそちらにそらすようにしている子がいます。また、こっちに来ないで、と言葉で伝えている子や、よちよち組の子が来る前に場所を移動している子もいます。
そんな姿を見ると、子どもなりにどう対処するのか、ということを学んでいるんだなと感じるのです。
もちろん、環境を分けて、お友だちに邪魔をされずに、遊び込める環境をきちんと用意する時もあります。
しかし、嫌だな、困ったな、と感じることをきっかけに育つ力というのもあると思うのです。
何でも大人が介入し、解決してしまっては、子どもたちが自分で乗り越えたり、他のお友だちとの関わるチャンスを奪ってしまうのかもしれません。
「嫌だな」と思うことがあっても、どうすればいいかを自分で考え、行動していく。その力があれば、困難があっても、気持ちを切り替えて、対処して、乗り越えることができるようになるでしょう。
そんな力がつけられるように、近くで見守りながら、すぐに手や口を出すのではなく、子どもたちにとって必要な援助を心掛けていきたいです。
早野