これは、移行前に見られたすくすく組の女の子たちのエピソードです。
すくすく組のAちゃんは、クラスの中で一番月齢が高く、土曜保育にも来ていることから幼児さんとの関わりも多いため、どこかお姉さん的存在です。
この日は、乳児園庭で三輪車やコンビカーを出して遊んでいました。
Bちゃんが三輪車に乗っていると、漕いだはずみで靴が脱げてしまいました。それにいち早く気付いたAちゃんは、さっとBちゃんに駆け寄り靴を履かせてあげます。
「Aちゃん優しいね、履かせてくれてありがとう」と声を掛けると、
「CちゃんがAの靴、履かせてくれんだよ」という答えが返ってきました。
すくすく組にCちゃんという子はいないため、誰だろう?と少し考えましたが、すぐに幼児組のCちゃんだということに気が付きました。
AちゃんとCちゃんはどちらも土曜保育に来ていて、一緒に遊んでいます。
そして、戸外活動の際に幼児組が靴の着脱を手伝ってくれているので、Aちゃんはその時のことを話していたのです。
さらに聞くと、「るんるんさん(2歳児クラス)になるから、Cちゃんみたいにお手伝いするんだー!」と得意げに話していたAちゃん。Aちゃんなりに、自分がもうすぐ2歳児クラスに上がること、自分がみてきたお兄さん、お姉さんの姿を想像してこのような行動をとったのだと思います。
これは、決してお姉さんはこういうことをするんだよ、と私たち職員が教えたことではなく、日頃の子どもたちの関わりの中で、自然とAちゃんがCちゃんの姿を見て学んだことです。
靴を履くお手伝いをする、片付けのお手伝いをするなど、Aちゃん自身が出来ることではありますが、靴が脱げてしまったお友だちを見て、「履かせてあげよう!」と気付ける力に驚かされました。
Aちゃんにとって、Cちゃんという憧れのお姉さんがしてくれていたことは、その場で靴を履かせるお手伝いだけでなく、Aちゃんの心の発達にもつながることでした。些細な関わりのようにも思ってしまいますが、Cちゃんの優しさが、次の優しさにつながったのです。
CちゃんからAちゃんに、AちゃんからBちゃんに、思いやりの連鎖が、心を育むきっかけになっていきます。
月齢の垣根を超えた異年齢保育の魅力に、改めて触れることが出来た事例でした。
木月ほほえみ保育園では、それぞれ進級に向け、新しい環境で過ごしています。
新しい環境にソワソワ、ドキドキ、色々な期待をしている子どもたち。
そんなとき、子どもたちにとっての強い味方は、一緒に過ごすお友だちです。
お互いがお互いを刺激し合いながら、心も体も育っていき、憧れのお兄さん、お姉さんの姿に近づいていきます。
新しい環境でも、子どもたち同士の様々な関わりを見守り、尊重しつつ、お互いを高め合える保育が出来たら…と思います。
平塚