タイヤを6つも付けたとっても大きなブロックの車。これをバラバラにする時、それってどんな時だと思いますか?どんな気持ちでブロックをバラバラにしているのでしょうか。
もっともっと車を大きくしたい時でしょうか。いえいえ、この子がバラバラにした後に作ったのは、タイヤが3つになった大きさ半分の車。
上手く作れなかったのでしょうか。いえいえ、それはもうとても大きくて立派な車だったのです。
るんるん組には井形ブロックがあり、それでオリジナルの車を作ることが大好きです。でもタイヤの数には限りがあって、どうしても早い者勝ちになってしまいます。
ある日、先に遊んでいたAくんはタイヤを6つ付けたとても大きな車を作って、お部屋の中を走らせていました。後から来たBくんも車を作りたいのですが、タイヤが足りず作ることができません。そこでAくんに「1つ貸して」とお願いしてみることにしました。しかしとても立派にできた車。Aくんはどうしても壊したくありません。
Aくんはお部屋の隅までBくんから逃げてしまいました。Bくんは欲しそうにAくんを見つめていましたが、貸してくれなさそうなAくんの姿に少し諦めようとしている様子。
さて、しばらくすると車をバラバラにし始めたAくん。
そこに何も知らないCちゃんがやってきました。”ブロックをバラバラにする=お片付け”と認識していたCちゃんは「お片付けするの?」「バラバラにしちゃったら悲しいよ」とAくんに声をかけます。
しかしAくんがBくんにタイヤを渡すと、Cちゃんは納得したようにその場から去っていきました。貸してもらえたBくんは嬉しそうにお礼を言います。貸してあげたAくんは少し照れくさそうにしていましたが、半分の大きさにバラバラになった車を持って満足気でした。
Aくんは「タイヤがない時のお友達の気持ち」や「タイヤを貸してもらえた時のお友達の気持ち」、Bくんは「タイヤを貸したくないお友達の気持ち」、Cちゃんは「タイヤを貸すためにブロックをバラバラにする気持ち」にそれぞれ気がついた瞬間でした。
相手が今どんな気持ちでいるのか、目に見えないものを理解しようとするのは大人でも難しいですよね。ただ実は2歳の子どもにとって、相手の気持ちを理解しようとする前にまず「相手には相手の気持ちがある」ということに気がつくことが、第一歩となります。
“心の理論”をご存知でしょうか。「相手はきっと〇〇だと思うだろう」といったように、相手の立場に立って相手の心情を予想したり、考えたりする能力のことです。心の理論、つまり相手の考えを予想したり理解したりできるようになるのは、個人差はありますが、おおよそ4〜5歳からだと言われています。
その過程として、まずは「相手には自分とは異なる気持ちや考えがある」ということに気がつく必要があるのです。
今回のタイヤを貸してあげた事例のように、るんるん組では、遊びの中でお友達にはお友達の気持ちがあるということに気がつく経験を日々積んでいます。お友達と玩具を取り合ったり、順番を抜かしたり、、、大人からすると譲ってあげて!とすぐに言いたくなってしまいますが、子どもはこの体験の中で、譲り合いの大切さや、お友達の気持ちに気が付きます。このような体験を積めば積むほど、成長するのです。
すぐに「譲ってあげてね」などと声をかけるのではなく、この体験の中で子ども自らの気づきを大切にしていきたいと思います。
池田