早いものでよちよち組さんが入園して3ヶ月が過ぎました。
私たち大人が感じる3ヶ月よりも0歳児さんにとっての3ヶ月は、とっても大きなものです。
例えば給食では(個々の発達にもよりますが)、生後9ヶ月で入園したお友だちは3ヶ月経つとミルクを飲んでいた後期食から卒乳して固形の離乳食だけで栄養を摂るようになります。
また、食事の形態が変わるだけでなく、「自分で食べたい!」と手づかみ食べをして食事に対して意欲的な姿が見られるようになります。
ここでひとつ、エピソードを。
入園時10ヶ月のAちゃんはあまり食事に関心がない様子でした。
保育士が食事を口に運んでも口を大きく開くことはなく、少量をゆっくり食べていました。後期食からは手づかみ食べが出来るように《にんじんスティック》が提供されるのですが、手づかみにも消極的です。
ただ、時間を掛けて食べていた分、咀嚼は十分です。そこで、完了食にあがったほうが噛みごたえが出て食への意欲が湧くかな?と1歳になると完了食に移行しました。
するとお皿のおかずに手を伸ばす姿が見られ始めたものの、おかずを握ってはお皿の外にポイッとしてパチパチ拍手~!と楽しみ、何日経っても口に運ぼうとはしませんでした。
どうしたら握ったものを口に運んでくれるかな?食べてみようと思ってくれるかな?と悩みました。そこで気付いたことがひとつ。そういえば、おやつはちゃんと手づかみで口に運ぶのです。
ということは、手づかみ食べが出来ないのではなく、食べ物を口に運ぶかポイッとするかは自分で決めているのです。
それまでは手づかみ食べがしやすいおかずをAちゃんの手元に置き、手づかみしにくいご飯やお味噌汁は私の手元に置いてスプーンで口に運んでいました。
でも、Aちゃんが食べようと思って手づかみをするならご飯でもお味噌汁でも果物でも良いかと考え直し、その日は全ての器をAちゃんの前に置いてみました。
それでも最初はやはり食材を口に運びませんでした。『仕方がない、今日も食べさせよう』とおかずをスプーンで口に運びました。しかし、舌で押し返して「いらない!」アピール。
今日は自分でも食べず、口に運んでも食べず…それならば最終手段、そのまましばらく待ってみる事にしました。
すると、食事中の友だちをキョロキョロ見渡し、ご飯(お米)をじーっと眺め、手が伸びてきました。内心、ご飯は3倍粥なので手づかみ食べしにくいのにな…ぐちゃぐちゃにして机に付けて遊ぶのだろうな…止めようかな…思いました。それでも自分から手を伸ばしたという事は、少しは関心が持てたのだろうとそのまま見守る事にしました。
するとしばらくして、ぐちゃっと掴んだ手を口に運んでいるではないですか!それも何度も満足そうに!手づかみ食べをしていたのです!
そこで、今なら!と「自分で食べると美味しいね!」と声をかけながら先程のおかずもスプーンで口に運んでみました。すると、嬉しそうにモグモグ食べています!数分前に舌で押し返していたとは思えないくらい普通にモグモグと。そしてその日はそのまま手づかみで給食を食べきりました!こんなに嬉しい事はありません!
今回の出来事から『意欲』は本人の気持ちが満たされる事で湧いてくるもので、「食べさせよう」「食べて欲しい」と何かをさせようとする大人の焦りの気持ちでは湧き上がらないんだと実感しました。
ついつい優しさのつもりで「こっちの方が食べやすいから」と食材の形状で手づかみ食べ用と介助用の食事を分けてしまっていましたが、それは「食べたい」意欲がなければ無駄な配慮なのですね。気持ちより先に効率を考えてしまっては却って発達を遅らせてしまうと反省しました。また、当法人の職員がルールとして挙げている「待つ保育」の意味を感じました。
十分に手づかみ食べを経験すると、自分にとってのひと口の適量を知ったり、食材の硬さ柔らかさ、熱さ冷たさ、色やにおいを五感で知ることが出来ます。また、触れる→つかむ→口に運ぶ→噛む…と動作としての発達も促されます。そしてその経験から次の発達段階である食具を使用しての食事に繋がっていきます。
手づかみ食べはテーブルだけでなく床も汚れる覚悟が必要ですよね。ご家庭では時間的にもなかなかダイナミックな手づかみ食べは難しいかもしれません。その分、保育園では日々思い切り手づかみ食べの出来る環境で個々の発達を促していきたいと思いました。
村松