木月ほほえみ保育園では在園児と一緒に一時保育のお友だち「すまいる組」さんも生活をしています。今回は0歳児クラスの「すまいる組」で7月より週3日登園しているAくんのお話です。
在園のお友だちは入園するとほとんどの子が週5日毎日登園し、2週間ほどかけてゆっくり個々のペースに合わせて慣れ保育を進めていきます。また、だいたい同じ時期に入園するので初めはみんなで泣き声大合唱、そして少しずつ保育士との信頼関係を築いていき、個人差もありますが1か月後にはほとんどの子が園生活に慣れていきます。
しかし、一時保育のお友だちは入園時期も登園のサイクルもそれぞれなのでたとえ入園から日数が経っていても在園児ほど登園回数がなく、どうしても園生活に慣れるには時間がかかってしまいます。
Aくんも7月に入園したものの夏休み期間もあり10月になっても登園時は泣き顔で保育士に抱っこやおんぶをされて過ごしていました。家庭の静かな少人数の空間とは真逆の大人数の賑やかな空間の保育園では、元気な声や動きにびっくりしてしまい安心して過ごす事がなかなか出来ませんでした。
そんなある日。その日も登園時から保育士が抱っこで過ごしていました。その横ではマットから顔をのぞかせたり隠れたりしてケラケラ笑いあって遊ぶ2人の在園のお友だちBくんとCくんがいました。私はBくんとCくんが大人を介さずにこんな風に遊べるようになったなんて成長したなぁ…とこの半年での成長ぶりを嬉しく思って見ていました。
すると視界の中に保育士に抱っこされていたはずのAくんがハイハイでやってくる姿が見えました。「えっ!Aくん!先生から離れられたの!!!」とびっくりして声が出そうでしたがその声でAくんの興味を邪魔してはいけないと思いぐっと我慢して見守っていると…
そのままBくんの元まで行くではないですか!そして、Aくんの存在に気付いたBくんはAくんにとびっきりの笑顔を見せていました。そして、この笑顔は『おいで!一緒に遊ぼう!』の合図となりました。
二人は何度も顔を見合わせると声を上げて笑いあい、その声に気付いたCくんもAくんの顔を見てニコニコ笑い、そのまま3人遊びに突入。
真ん中にいるBくんを中心にそれぞれの顔を見てケラケラ笑っているだけなのですが3人ともそれはそれは楽しそうでした。
そしてAくんはその後も保育士の元に戻ることなく、室内を探索したりおもちゃで遊び始めました。また、おもちゃで遊んでいる時に私達保育士と目が合っても話しかけられても抱っこを求めて泣くことはありませんでした。
Bくんの笑顔と二人の笑い声がAくんにとって保育士の抱っこよりも魅力的に映ったことで保育園が楽しい場所だと認識でき、遊びたいと思うきっかけとなったようです。
泣いている子どもに対して「何を欲しているのか?」「どういう気持ちなのか?」「その気持ちを切り替えるにはどうすればよいのか?」と考えながら保育をしています。特に園生活に慣れていない時期には「この子が少しでも落ち着いて過ごすにはどういう対応が心地よいのか?」という思いでいっぱいです。
しかし、一生懸命になればなるほどその思いを敏感に感じ取ってなかなか泣き止まないものです。結局抱っこやおんぶで密着することで安心感を持ってもらうばかりで少しもどかしい思いもありました。
そんな時に出会ったこの出来事。
まだ1歳になったばかりの3人が笑顔のチカラ、友だちのチカラを教えてくれました。
笑顔の持つチカラの大きさ、保育士との関わりばかりでなく子ども同士の関わりによってこんなに友だちの心を掴むのかということに気付かされました。
また、この空間ではAくんBくんCくんもたくさんの「気付き」をしていました。
保育士に抱っこをされながらも周りをよく観察して笑顔や笑い声に気付いたAくん。
そしてAくんが近くに来たことに気付いて自然と受け入れたBくんとCくん。
お友だちと笑いあうのが楽しいと気付いたAくんBくんCくん。
自分自身で気付いた事は大人も子どもも心に深く刻まれるものです。この出来事以降のAくんは登園時に保護者から離れても涙を見せず、保育士が抱っこから降ろすとすぐにおもちゃで遊ぶようになりました。
これからも子どもの持つチカラを信じて子ども同士のチカラで保育園生活を充実させたものに出来るように見守っていきたいと思います。
村松