すくすく組の生活が始まってはや半年が過ぎました。日々生活する中で、少しずつお喋りが上手になってきた子どもたち。図鑑を見て、果物や動物の名前を言うことができるようになってきたり、歌のイントネーションが気にいると繰り返し言葉にするようになったりしています。
そして何より生活の流れもわかってきて、ご飯のご挨拶「いただきます、ごちそうさま」を始め、ドアを開けて欲しい時は「あけて!」、おもちゃを使いたい時は「かして!」「こうかんこ!」など、生活の中に必要な言葉も言うことができるようになりました。
とある自由遊びの時間。Aちゃんは1つ年下である0歳児のお友達に向けて絵本をめくっていました。絵本の内容を口にはしていませんが、どうやら絵本の読み聞かせをしてあげているようです。
そこに少し離れたところで遊んでいたBちゃんがやってきて「かして!」と一言。BちゃんはAちゃんが読み聞かせをしている絵本を読みたいようです。
Aちゃんは言います、「あかちゃんの!」
Bちゃんは上手く聞き取れず聞き返します、「Aちゃんの?」
Aちゃんはさっきより大きな声で言ってみます、「あかちゃんの!」
Bちゃんそれでも聞き取れず「Aちゃんの?」と聞き返します。
Aちゃん、今度は指をさして言ってみます、「あかちゃんの!!」
Bちゃんはようやく理解したようで「あかちゃんの…」と言いながら、Aちゃんの隣に座って、別の遊びを始めていました。
このエピソードの中で2人が使った言葉は「かして」「あかちゃんの」「Aちゃんの」、たった3単語だけなのです。この3単語を発する中で、相手を理解しようとしながら話しているのが伝わってきますよね。AちゃんがBちゃんへ言いたいことが伝わっていないのを理解し、大きな声で言ってみたり、指をさしてみたり。BちゃんがAちゃんの言いたいことを理解しようとして、何度も聞いてみたり、意図を察して別の遊びに移ってみたり。
もっとお話ができるようになれば「今あかちゃんに読んであげているの!」「読み終わるまで待っていてね」など、言葉での伝え方がいろいろありますが、Aちゃんはジェスチャーを混ぜてみたり、BちゃんはAちゃんが言った言葉に続く言葉を想像したりと、よく考えながらやり取りをしていたのだなぁと感動します。
子どもは今まさにこの気持ちを伝えたい!この状況を伝えたい!と必要になった言葉を覚えていきます。ただきっとこの場面で身についた力は言葉だけではないように思います。
“相手の意図や気持ちを汲み取る力”、そんなコミュニケーション力がグッとついたのではないでしょうか。私たち大人も日常会話をはじめ、決して言葉だけでやり取りをしているわけではありません。相手の目線や仕草、声色や言い切らなかった言葉たち…様々な相手の発信から目に見えない気持ちを汲み取ろうとします。今となっては無意識にやっている事柄も、乳幼児期に様々な集団で過ごしていく中で身についていくのです。
上手く伝わらなくてもどかしい時、大人が言葉を補って代弁してあげたい場面も多いですが、ここはちょっと見守ってみる。こういう場面こそ子どもが力を発揮する時です。子どもが相手にどうやったら伝わるかな?と考えられるように、言葉を教えるだけではなく、相手の気持ちを一緒に想像してみる。
コミュニケーションにおいて大切な、相手を観察する力や気持ちを推測する力、そんな力が育まれるように日々援助しながら、関わっていきたいと思います。
池田