とある夕方の自由遊びの時間。
Aくんは車コーナーで大好きな車をいくつも線路の上を走らせて遊び、Bちゃんは大好きなバイキンマンのぬいぐるみを左腕に抱えながらおままごとコーナーで遊んでいました。
お部屋の中にバイキンマンが見当たらないとキョロキョロと探すことがしばしばあることから、Bちゃんのバイキンマン好きは先生たちによく知れ渡っていました。もちろん見つからない時には他のキャラクターのぬいぐるみで遊び始めますが、きっと1番好きなキャラクターはバイキンマンなのだろうと、普段の遊びの様子から理解できました。
そんな姿をAくんもよく知っていたのでしょうか。ふとBちゃんがAくんの隣で車遊びを始めた時、Aくんは何かを思い立ったようにその場を離れました。そしてお部屋の中をキョロキョロ。
Bちゃんの隣に戻って来ると、無言でバッと差し出したのは、Bちゃんの大好きなバイキンマンでした。「これ好きでしょ??ぼく知ってるよ!」という言葉が出てきそうな表情のAくん。
でも車に夢中のBちゃんは「いらないっ」と、まさかAくんへバイキンマンをリリース。あんなに大好きなバイキンマンを持ってきてくれたのに…と見ていた私も思いましたが、AくんもBちゃんの返答に戸惑う様子。ほしいでしょ??と何度もバイキンマンを渡していましたが、いよいよ”今の”Bちゃんには必要ないと思ったようで、静かに隣で車遊びの続きを始めました。
なんともAくんにとっては切ないエピソードになってしまいましたが、同時にBちゃんのことをもっと知る機会になったのかもしれません。
ふと気がつくと、いつの間にか自分の持ち物以外にもお友達の持ち物や、お友達の好きなものまで把握している子どもたち。
まだまだ1人遊びや並行遊びが盛んな時期で、一見1人で過ごしているように見えても、今回のAくんがBちゃんにバイキンマンを差し出すことができたように、一緒の空間で過ごす中でお互いの遊びの様子や生活の様子をとってもよく見ているんですね。
また今回のエピソードでAくんが気がついたように、どんなにバイキンマンが好きなBちゃんでも、いつもバイキンマンを必要としているわけではない。”今の”お友達は何をしたいのか、”今の”お友達は何を求めているのか、そんな他者理解も、1歳児にはまだまだ少ないたった一瞬のお友達との接点の中で少しずつ身につけているのだと思います。
何気ない日常の中で一体子どもたちの目には周りのお友達がどう映っているのか、何を感じ取ろうとしているのか…子どもたちのふとした場面での目線を大事にしながらこれからも過ごしていきたいと思います。
池田