1月中旬から、発達に合わせて幼児組に少しずつ移行しているりす組さん。憧れの幼児組さんに行くことができるという高揚感と、慣れない環境に行くという少しの緊張感が混ざっている状態ですが、毎日元気いっぱいに遊んでいます。そんなりす組さんの移行が始まる前のお話をしたいと思います。
ある日園庭で、Aくんが「ねー、みー先生!Aのお顔描いてよ」と声をかけてきました。よく「アンパンマン書いてよ!」とリクエストをしてくるので、「アンパンマンじゃなくて、Aくんのお顔を描くの?」と聞くと「うん」と言って描くための石を渡してきました。私はAくんの顔を見ながら、似顔絵を描き「こんな感じでどう?」と聞くと、「うん、いいよ」と納得して貰えましたが、あっさりお友達の所に走って行ってしまいました。「あんまり喜んで貰えなかったな…」と自分の絵心の無さを反省しました。しかし翌日、また園庭でAくんが石を片手に「ねー、みー先生!」と声を掛けてきました。「今日はアンパンマンかな?」と思っていると、「こっち来てよ!みー先生のお顔描いたよ!」と言って私の手を引き、地面に描いた私の顔を見せてくれました。それは、丸い輪郭の中に目、鼻、頰、口が描いてある顔でした。Aくんは、私がかけていたメガネも、鼻の穴のようなものまで描かれて、前日に私が描いたAくんの似顔絵を遥かに超越したものでした。驚きと同時に昨日の似顔絵のお返しに私の似顔絵を描いてくれたという嬉しさで思わず拍手!「ありがとう!Aくん!とっても嬉しいよ。上手に描いてくれたんだね」と言うと「うん」と少し照れながら答えてくれました。Aくんはいつも見ているアンパンマンの顔と実際に見た私の顔を合わせて描いたのかもしれませんが、以前、制作の時に描いてくれた似顔絵よりとても上手に描けており、Aくんの成長を感じました。
子どもが描く顔は、発達によって変わっていきます。最初は殴り描きやうずまき状の円から始まり、頭から手足が生えている様に描く「頭足人」、そして顔や体のパーツが揃っている人を描いたり、地面を表す基底線や空を表す太陽や雲を描いたりします。
りす組では、クレヨンで自由帳に好きな絵を描いて貰えるようにしており、絵を描くことが好きな子は真剣な顔で絵を描いています。昨年の夏頃は殴り描きのような絵の子でも今では上手に丸や顔のようなものが描けたりと子ども達の発達状況が自由帳を見るとよくわかります。子ども達の絵の上達にはもちろん人それぞれ個人差があります。ですが、それぞれの絵には素晴らしい個性があり、その個性の塊こそ世界に一つしかない絵です。そう思うと一つ一つがとても重みのある作品となりますね。
私たち保育士は子ども達に寄り添いながら、絵を描く楽しさを教え、成長を見守りたいと思います。
田所 未帆