「ねーねー、何かお手伝いすることある?」と、最近よく私に子どもたちが聞いてきてくれます。これはどういうことかといいますと、私がよく年長児に色んなお願い事、頼みごとをするのです。年少児のお世話役、紙のコピーのお使い、廃材の補充、色鉛筆の削り、絵本の棚の整理整頓などなど・・・
元々は保育士がやっているところを子どもたちが「何してるの〜?」と見にきて、「私もやりたーい」とお手伝いしてくれたのがきっかけでした。主に年長児が手伝ってくれるのですが、4月の年長になりたての頃は、「ちょっとそこに落ちてるの拾ってくれる?」とお願いしても「私(僕)、やってない」と返事が返ってくることが多かったのです。ある時、Aくんが「僕が拾ってあげるよ」たまたまそばにいて拾ってくれました。私は「ありがとうね」とお礼を言いました。その日の帰りの会でみんなに話しAくんのことを話しました。私が本当に嬉しかったことを改めてみんなの前で伝えました。
すると、次の日。何もお願いしていなかったのに、Bくんが「おままごとが汚かったから片付けておいたよ」と教えてくれました。その日の帰りの会に今度はBくんの話しをしました。
こうして、段々と「僕やってない」という言葉は減っていきました。
保育所保育指針の中の「育みたい資質・能力」の中で、”心情、意欲、態度が育つ中で、よりよい生活を営もうとする力、学びに向かう力、人間性等”と書いてあります。保育園というみんながいる集団生活の場では、いろんな人がいます。そして、様々なことが起きます。その中で、みんながみんな自分だけのことを考えて行動していたら、生活が成り立ちません。生活を成り立たせる為に、ある程度のきまり、ルールを作り、それを守っていくことでみんなが生活していくことができます。ですが、みんながきまりやルールだけを守っていればいいのかというとそうではないと思います。「僕、やってない」がまさにそれで、確かにあなたはやっていないけれど、それでいいの?と思わず尋ねてみたくなります。よりよい生活を営む為には、”自分が自分が”ではなく、”誰かの為に”という気持ちが大切です。簡単そうで、とても難しい話だと思います。難しいけれど、子どもたちは誰かの為に力を出すことが本能的にできるのです。自分より小さい子にお世話する姿がまさにそれだと思います。
子どもたちにお手伝いをお願いすると嬉しそうに、張り切って頑張ってくれます。誰かの為に力を出すことの喜びを知るということは、人間としてとても大事なことですよね。
宮川 盾夫