幼児組では勝ち負けのあるゲームなどの活動も取り入れています。3歳児の子どもたちも楽しんで参加しています。お友だちと同じことをして遊ぶのが楽しくて仕方がない子どもたちですが、少しずつその姿に変化が見られるようになってきました。
ある日、ホールで椅子取りゲームを行いました。乳児から幼児に上がったばかりの頃に行ったときは、まずルールがわかるように、ピアノが鳴っている間は歩く、ピアノが止まったら座る、と子どもたちと同じ数の椅子を用意して行いました。みんな、キャーキャー笑いながら楽しんでいました。後半、椅子を減らしていきましたが、しっかりルールを覚えていき、座れなかった子も笑いながら、待機場所の椅子に座っていました。
それからしばらく経ち、また椅子取りゲームを行った時に、前回見られなかった子どもたちの姿が…。ゲーム開始、椅子に座れた子も座れなかった子も笑っていました。残った子で再びゲーム開始。そこで座れなかったAちゃんが、待機場所の椅子に笑いながら向かい、少しすると泣き出しました。Aちゃんは前回のゲームでも途中で座れなかったのですが、その時は待機場所のお友だちと笑い合っていました。でも、今回は泣いています。おそらくAちゃんはゲームについてくる勝ち負けが分かるようになり、それに対して、負けて『くやしい』という気持ちを持ち、それが涙になったのでしょう。
これは、自分と他の人の区別がはっきりし、『集団の中の一人である自分』を知り、自分と相手の気持ちの違い、思い通りにいかないことへの葛藤を得たということです。この葛藤やくやしいという体験をするなかで、気持ちを受け止めてもらい、大人やお友だちと乗り越えることで、徐々に自分で乗り越える方法を考えられるようになっていきます。そうした体験のなかで、人に対する信頼感や思いやりの気持ちの芽生えにも繋がっていきます。
Aちゃんや他のくやしく思う子どもたちには、その気持ちの大切さや、もしかしたら勝った子よりもこれから強くなれるかもしれないことを伝えました。
生きていくなかで、つまづく場面はたくさんあると思います。それらを避け続けるのではなく、うまくいかなくても、『次はこうしたら…』とどんどんチャレンジしていってもらいたいと思います。
坂本 摩利