ある日の出来事。ゴミ捨てを終え、りすぐみの部屋に戻ると、Aちゃんが私に近づき「絵本がない!」と慌てて伝えにきました。クラスの絵本コーナーを見ると、確かに絵本がいつもより少ない!そして辺りを見渡すと、絵本を大量に持ったBちゃんAくんが椅子に座り、絵本を椅子の上に置こうとしていました。私は絵本を椅子に上に乗せ、高くして遊ぼうとしていると思い、すかさず「どうしたの?」と声をかけました。しかし、私はこの後当番の時間で、他のクラスに行かなくてはいけなかったため、何をしたかったのかを聞かずに、「絵本、読みたいお友達もいるから1人1冊にしようね」と声をかけてその場を離れてしまいました。
そして、またある日のこと、りすぐみのレストランルームの方から「♫おはなしおはなしパチパチパチ。嬉しいおはなし、楽しいおはなし〜」と保育者がいつもしている手遊びを椅子に座り、子ども同士でやっている姿が見えました。そして、絵本コーナーに目を向けると、またしても絵本が少なくなっているのです。「絵本はどこに…」絵本の行方は、保育者の手遊びの真似をしている子どもたちの背中に椅子と挟むようにしておいてありました。「なんで絵本を背中に置くんだ…?」と疑問に思い、おもむろにその様子を見ていました。すると、BちゃんとAくんが「絵本始まりまーす!」と言い出し、背中に置いていた絵本を取り出したのです。その瞬間、私は「はっ」と気がつきました。よく、お散歩から帰ってくるとオムツ替えや給食の時間に時間差をつけるため、青空玄関で絵本の読み聞かせをすることがあります。その時、先に部屋に入った保育者から何冊か絵本を持ってきてもらい、その絵本を子どもたちに見えないよう背中に置いておくことがありました。「保育者の真似をしていたんだ…」と気づき、先日の「どうしたの?」と私が声をかけた場面も保育者の真似をして保育者になりきって遊んでいたことに気づきました。
新しい保育所保育指針で「ごっこあそび」は「生活や遊びの中で、年長児や保育士等の真似をしたり、ごっこ遊びを楽しんだりする」(人間関係)「生活や遊びの中で、興味のあることや経験したことなどを自分なりに表現する」(表現)とあり、子どもたちは自分が見て経験した世界を「ごっこ」遊びとして表現することで、他人とイメージを共有したり、自己表現する方法を学んでいたりします。私自身、この出来事がきっかけで子どもたちの遊びでどんな言葉をかけたらいいのかは、子どもの姿をよく見ないと分からないと感じました。
この出来事を大切にして、子どもが何に面白さを感じているのか、何を表現しているのか、子どもの思いにしっかり寄り添うように心がけていきたいです。
小池 達哉