皆さんは日吉公園の草むらの石壁を知っていますか?石が積まれてできた壁で、そこを登れば遠回りするよりも早く上へと登ることができます。しかし、その石壁は、一見簡単に登れそうな高さではあるのですが、登るには腕の力や足をうまく引っ掛けることが必要で簡単には登れない壁なのです。そんな石壁で起きた出来事をお話しします。
風が気持ちよく感じるある日。りす組で日吉公園へお散歩に行きました。草むらに到着すると、早速Aちゃんは石壁に向かい、石と石の隙間に足をかけ腕や足の力を使って登り始めました。うまく登れず落ちては登って落ちては登ってを繰り返し、なんとか石壁を登りきることができました。その様子を見ていた子どもたちは、Aちゃんが登りきる様子に目を輝かせ、次々に石壁登りに挑戦。しかし、りす組の子どもたちが登りきるには、そう簡単な高さではありません。上まで辿りつけず保育者に「やってー」と手伝いをお願いする声が聞こえ始めました。しかし、何かドラマが生まれそう・・と感じた私は、「どうしたら登れるのかなぁ」とあえて方法を伝えず、手伝わずに見守ることにしました。
すると、ここから子どもたちの面白さが溢れ出すのです。Aくんは、それでもその石壁に食らいつき、少しずつ登っていきます。Bちゃんは、その場を離れ、端の石壁が低くなっているところを見つけ、そこを登って上を目指します。Cちゃんは石壁を登るのではなく、端までいき石壁を登らず遠回りして上へと目指しました。
この光景を見て私は、子どもたちが自分で考え、『石壁を登り切る』という目標に向かって自分なりに行動する姿に心を打たれました。
保育所保育指針において「自立心」とは『自分の力で行うために、考えたり、工夫したりしながら、諦めずにやり遂げることで達成感を味わい、自信を持って行動するようになる。』と示されています。
石壁の出来事のように、保育者の指示通り行動するのではなく、自分で方法を考え、行動することによって、自立心は育って行くのではないのでしょうか。
遠回りや低い石壁を選んだ子どもたちは、最初に登ろうとした石壁を登れなかった悔しさが残るのではないか?と思う方もいると思いますが、その子たちの登りきった表情を見ると、なんとも満足そうな表情をしていて「登れたね!すごいね!」と声をかけると、自信に満ちた表情に変わっていました。
そして、その後さらに関心したのが、登りきった子どもたちが、登ろうと挑戦している子どもに向かって「頑張れー」「◯◯ちゃんは登れたよ!(笑)」と声をかけていたのです。
大人からしてみればただの壁ですが、子どもたちには様々なドラマが隠されていた壁でした。子どもたちが何かに挑戦しているとき、ゴールだけに注目するのではなく、そのプロセスにも注目して子どもの挑戦を見守っていきたいですね。
りす組 小池 達哉