木月保育園では、食育の一環として毎年様々な野菜や米などの栽培活動を行っています。特に野菜は夏になるとたくさん収穫出来るので子どもたちも毎年楽しんで収穫しています。しかし、米の栽培活動が子どもの間でなかなか盛り上がらず、悩んでいました。米は野菜と違って、目に見えて実がなるわけではないですし、すぐに収穫出来るというわけではありません。そのため、なんとなく育っていっているけれど、子どもたちはあまり見ていないというのが現実でした。どうしたら良いか、考えながら進めていったときに不思議な出来事が起こりました。
暑くなる6月頃、子どもたちはこのぐらいの時期から虫探しに夢中になります。この日も数名の男の子たちが畑周辺でめずらしい虫はいないか探していました。するとAくんが急に「田んぼに魚がいる!!!!!」と叫びました!見てみると確かに小さな魚のような生き物が数匹泳いでいました。みんな集まってきて夢中になって観察していました。見つけた子どもたちは「魚」と呼んでいましたが、調べてみるとその生き物の正体は「ホウネンエビ」でした。魚ではなくエビだったのです。
このホウネンエビは6月頃現れる生き物で、ホウネンエビが出てくるとその年のお米は豊作になると言われているそうです。この話を幼児組の朝の会で話をすると子どもたちは静かに真剣に話を聞いていました。せっかくなのでホウネンエビを水槽で飼うことにしました。子どもたちはとても可愛がっていて毎日「おはよ〜」と挨拶をしたり話しかけたりしていました。その後も田んぼにはホウネンエビの赤ちゃんがたくさん産まれました。子どもたちは赤ちゃんを捕まえたり観察したりして楽しんでいましたが、その後気温が高くなり、真夏になるとホウネンエビはいなくなってしまいました。ホウネンエビは気温が高くなってしまうと生きられないそうなんです。
この体験を通して栽培活動は、食材に関心を持ち、育っていく過程を知るという目的のほかに自然に触れることで新たな生き物を発見したり、その生き物と作物の繋がりを学んだりする魅力もあるのだと気付かされました。ホウネンエビの存在をきっかけに子どもたちはお米を意識して見てくれるようになりました。「稲が伸びてきたね」「お米できてきたよ」と変化を感じ、育っていく過程を楽しんでいます。この不思議な生き物のおかげでお米は順調に育っていて豊作が期待されています。自分たちで育てたおいしいお米をたくさん食べられるように引き続き大切に育てていきたいと思います。 フリー 鷲巣 美穂