木月保育園のブログ「小さなもみじの物語」

「これって不思議だね」フリー編

2020.11.16

先日0歳児の保育室で、A君が保育士のロッカーの扉に柔らかいブロックを当てていました。周りのお友達がキャーキャー声をあげていても、一人夢中になって扉一枚一枚にブロックを当てているのです。よくよく見ていると、どうやら保育士の真似をしていることがわかりました。この保育士のロッカー、子どもの怪我やイタズラ防止の為に取手がありません。その代わりに、磁石で鍵部分に触れると開く面白い仕組み。A君は、保育士がいつも磁石でロッカーを開けている姿を見て、自分も開けたい!でも手では開けられないけど、保育士みたいに道具(形状が似ている柔らかいブロック)を当てれば開く!と思ったのかもしれません。一生懸命ブロックを扉にあてていました。まだまだ1歳半になったばかりなのに、すごい創造力ですよね。残念ながら、持っているのが磁石ではないので扉は開けられず、A君は全部の扉をブロックで触ってみてから、ポーイとブロックを投げて他の遊びに行ってしまいました。

先月、幼児組の誕生日会で「サイエンスショー」をした私。水に浮く野菜や浮かない野菜の話をしたり、静電気の話等、私達の生活の周りにある不思議なことを、幼児組の子ども達に紹介したばかりです。でもSTEM教育の種はこんなに小さいうちから、自然と芽生えているんだなーと、A君の行動に感動してしまいました。

実は今、世界的に「STEM教育」というものが注目され推進されています。IT化やグローバル化などから、覚えることが多いだけの学習では、変化の速い社会に対応できる人材の育成が難しいからだそうです。諸外国では国家戦略として進められ、日本でも少しずつ取り入れられてきています。STEM教育は、社会の変化に対応し、「創造性や独創性を持って問題を解決し、新たな価値を創造できる人物」を育成するための21世紀型教育と言われています。

STEMとは、以下の4つをさします。

S:Science(科学)

T:Technology(技術)

E:Engineering(工学)

M:Mathematics(数学)

STEM教育は、科学・技術・工学・数学の教育分野を総称しています。更に最近はA:ARTを加えてSTEAM教育と言われることもあります。STEM教育の特徴は、①4つの教育分野を横断的に学ぶ②実践力を重視③体験型・創造型(アクティブラーニング)と言われています。その為、日本でも小学校からプログラミングの授業が始まったり、先生が一方的に教えるのではないアクティブラーニングが重要視され始めました。では、保育園でもプログラミングをすれば良いのか?と言うわけではありません。STEM教育の目的は「革新的アイデアと創造的思考により、課題を解決し価値創造できるようになること」です。幼児期には、その入り口として、①子どもに寄り添いながら子どもが元から持っている「知りたい!やりたい!」という気持ちを大切にします。時間に余裕を持ってじっくり取り組ませること。②心(頭)と身体の成長のバランスが噛み合うように、指先をたくさん使って小さい頃から感覚を育てること。③科学的な思考は、自分で仮説を立て、失敗を恐れずにやってみる姿勢がとても大切です。そのためには大人の顔色を見て萎縮するのではなく、自立すること。この3つのことを大切にするのが大事だそうです。将来のために知識や技能を蓄える土台作りというところでしょうか。幼児期に培われたものが、アイデアを創造するだけでなく、試行錯誤しながら実践できる「革新的アイデアと創造的思考により、課題を解決し価値創造できるようになること」が出来る土台になるわけですね。

A君が自然にした行動も、「扉を開けたい(やりたい)」気持ちから、「保育士の行動を模倣することで、こうしたら出来るんじゃないか?」という創造性から生み出したものだと思います。そう考えれば、大人から教わらなくても子どもの内側から自然に芽生える現象なのかもしれません。そう言った子ども達に芽生える、生活や自然の中で色々なことを不思議だなぁと思う気持ち。大人になると当たり前になってしまうことも多いのですが、子ども達の気持ちに寄り添いながら、また不思議だなと思える材料を沢山子ども達の側に揃えていきながら、これからも保育していきたいと思います。フリー 中澤 明日香

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